みかん小説
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"4000円を頼んだ私に、死んだはずの父から4000万円" 第12話

「……え?」

「夕方、倒れるさ……あの弁護士から、話があったんだよ」

母は苦しそうに息を吸い、目を細めた。

「『理という親族が、奈さんの職へ無断で押しかけてしまった。先が厳に叱責しているが、変な無礼をお詫びしたい』ってね……」

母の乾いた唇が、悔しそうに引き結ばれた。

「あのの連が、あんたの職を汚したんだね」

「お母さん、もういいの。私は何も気にしてないから」

「気にしてないわけ、あるかい!」

母の声に、瞬だけ昔の激しさが宿った。図の波形がわずかに乱れ、アラームがさく鳴る。

「あの男も、あのの親族も……昔から何も変わっちゃいない。自分たちの都とのことしかにないんだよ」

母は井を見つめた。その瞳に、の歳を遡るような、い悔と烈のようなが宿っていた。

「奈。あんたに、ずっと話していなかったことがある」

悠が気まずそうにちがろうとしたが、母は線だけで夫を制した。

「ゆと君も、そこにいなさい。あんたは奈の夫なんだから、っておく権利がある」

母はゆっくりと息を吐きし、静かに語り始めた。

「私はね、ただの定の娘として、あの男に弄ばれて捨てられたんじゃないんだよ」

。母の澄は、座にある老舗ホテルのメインダイニングで、フレンチの調理として働いていた。

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当、女性がホテルの厨で鍋を振るうこと自体、珍しかった代だ。男社会の厳しい現で、母は誰よりもく仕込みに入り、寸胴を磨き、魚を捌いた。確かな腕と覚で、若くして菜と肉料理のセクションを任されるまでになっていたという。

「条正隆はね、当、親の威を背負ってアメリカのホテルスクールから戻ってきたばかりの、青才の役員だったよ」

察と称して厨にりてきた正隆は、男性料理に混ざって黙々とフライパンを振るう母の姿に、目を奪われたのだという。

「毎晩のように、私の作る料理をべに来たよ。コンソメの引き方が素らしいだの、ソースの酸が完璧だの言ってね。私も若かったからさ……自分の料理をそこまで真っ直ぐに評価してくれる男に、を許しちまったんだ」

は付きい始め、やがて母の腹のに、私が宿った。

正隆は最初、んだという。「認して、結婚する。で温かい庭を作ろう」と、涙ぐみながら母のを握った。けれど、その言葉は、条の総本である親族会議の分い扉のに、あっけなく砕された。

「呼びされたのは、本郷にある条の本邸だったよ」

母の語りは、淡々としていた。けれど、握りしめられたシーツのさが、の屈辱のさを物語っていた。

「広な敷の奥の広に、親族会議の老たちがずらりと並んで座ってた。

正面に座らされた私に、彼らが何を言ったとう?」

母は自嘲するように笑った。

「『厨の油の匂いが染みついた女を、条の正妻として迎えることは断じてできん。料理などという卑しい職業を捨て、裏通りのマンションにめ。そこで子を産み、条の嫡子として本に引き渡せ。おには切れと、自由しない当を毎くれてやる』……そう言われたよ」

喉の奥が、カッとくなった。像するだけで、胃の腑が煮えくり返るような傲さ。

「私は、正隆の顔を見たよ。私の隣で、あの男は何て言ったとう?」

母は目を閉じた。

「何も言わなかった。膝のに置いた両を震わせて、ただ畳を見つめて……老たちの言葉に、言も逆らわなかったんだよ。『澄、とりあえずここは言われた通りにしてくれ』って……けない声で、私に縋ってきた」

静まり返った病に、母の乾いた声だけが響く。

「その瞬、私ので百の恋もめちまった。この男は、私の料理を褒めてくれたんじゃない。条の圧から逃げるための、全な隠れとして私を利用していただけだったんだってね」

母は目をけ、私をまっすぐに見つめた。その瞳には、筋の迷いもなかった。

「私はそので、エプロンを脱ぎ捨てるようにちがったよ。親族が差ししてきた切の束を、老たちの目ので真っつに破り捨ててやった。

『度と私のにツラを見せるな』って言い残して、本邸の玄関を蹴破るようにしててったんだ」

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