"妻の浄水器は粗悪品、義母のキッチンには84万円" 第15話
だけど、いきなり座を分けるとか、事を別にするとか、そこまで極端なことしなくても……」
「に役所とにってくるわ」
私はエプロンをし、バッグを肩にかけた。
「午、パートのシフトを代わってもらったから。与振込の変更続きと、折半用の引き落とし座の設、全部今に済ませる」
夫の喉が、ヒュッと引きつった音をてた。
「待てよ! 俺の遣いはどうなるんだよ!? 来週にはリフォームの残の支払い期が来るんだぞ! 万以を括で払ったら、俺の座、今で底をつくんだぞ!?」
私は玄関で靴を履きながら、ややかに夫を見げた。
「私のったことじゃないわ。あなたが自分の見栄のために勝に契約したんでしょう? 自分で面しなさいよ。黒柱なんでしょう?」
「美……!」
すがりつくように伸ばされた夫のを、私はを引いてかわした。
ドアをけ、朝のぬるい空気のにを踏みす。
カチャリと鍵をかけ、振り返ることもなく駅へ向かった。
背で、夫がチェーン越しに何かを叫んでいたが、の警笛にかき消されて文字も届かなかった。
の窓で、番号札を持って待つの分。
私の臓は、驚くほど静かに脈打っていた。
呼ばれたブースに座り、窓の員に告げる。
「個の普通預座をつ、規で設したいのと……こちらの総座の届印を、しいものに変更してください」
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バッグから取りしたのは、昨、駅の印で彫ってもらったばかりの、真しい黒牛の認印だった。
に結婚した、夫の親戚から贈られた「」の印鑑は、もう度と使わない。
用に自分の名をき込む。
所、、勤務先。
『 美』
夫の扶養族としてではなく、自分のでち、自分の汗で稼いだを管理するための、私だけのの礎。
「暗証番号の設定をお願いします」
テンキーに、夫の誕でも、結婚記でもない、私だけの数字を打ち込む。
ピ、ピ、ピ、ピ。
指先に伝わるプラスチックのい触が、たまらなくよかった。
渡されたしいキャッシュカードと通帳の表を、指先で撫でる。
残は、私の独代のわずかなへそくりから移した、万円。
たった万円の数字が、まるで鋼鉄の盾のように頼もしく見えた。
をたそので、スーパーの事務所へ向かった。
に「与の振込座を変更したいのですが」と類を差しすと、は特に詮索もせず、「末締めの翌払いから反映させておくね」と受領印を押してくれた。
あっけないほど、簡単だった。
私のを縛り付けていた鎖は、な鉄の鎖などではなかったのだ。
「族だから」「夫をてなければならない」という、自分自がので作りげていた、ただのっぺらいい込みの蜘蛛の糸に過ぎなかった。
その糸を自らので引きちぎった瞬、世界はこんなにも通しが良くなるのかと、の眩しい差しを見げて息を呑んだ。
そのの午、義母の富美子さんから、私のスマートフォンにいメッセージが届いた。
『リフォーム会社に話して、期事はすべて解約させました。期事の残も、私の定期預を解約して、先ほど全額振り込みました』
画面をスクロールする。
『浩には、円たりとも払わせません。あの子が払えば、結局は美さんの活にツケが回るだけですから。その代わり、あの子に貸し付けた分として、借用をかせます。毎私の座に、きっちり万円ずつ返済させます』
そして、最にこう結ばれていた。
『美さん、本当にごめんなさい。母親失格でした。度と、あの子の見栄に付きったりしません。あなたの体を、番に切にしてあげてください』
画面を見つめたまま、喉の奥がツンとくなった。
義母は、逃げなかった。
抱き続けてきた「自の息子」というを自らので打ち砕き、歳の元資を削って、息子の汚い見栄を清算したのだ。
その覚悟のさに、私はくをげるいだった。
同に、夫という男の逃げが、この世から完全に消滅したことを確信した。
その夜から、がの卓は完全につに分かれた。