"妻の浄水器は粗悪品、義母のキッチンには84万円" 第6話
「母さんのところの流し台、排パイプからが漏れててが腐りかけてたんだよ。団の管理事務所に言っても埒がかないっていうから、俺が見積もりだけでも取ってやろうとしただけだ。万円は……付みたいなもんで、事を本契約するかどうかはまだ決めてない」
「本契約するか決めてない?」
私は見積のを指さした。
そこには、朱の角印が鮮に押されている。
『契約締結: 事着予定:』
「着予定、来週じゃない」
夫の眉が、引きつるように痙攣した。
「それは業者が勝に入れた付だ! 俺はまだサインしたつもりは……」
「ここ、あなたの字よね」
施主署名欄の、癖のある角ばった文字。
連れ添った男の跡を、見違うはずがなかった。
「……万千円」
私のから、乾いた数字がこぼれ落ちた。
「残万は、事完に括振り込み。浩さん、このお、どこからすつもりだったの? うちの貯、定期預も全部崩して『もう老資の百万しかない』って、あなたが管理してる通帳を私に見せなかった?」
「それは……俺の個のだ!」
夫が突然、鳴り声をげた。
唾が私の頬をかすめる。
「俺がで必に営業回って、削れるところ削って作っただよ! 計とは関係ない! おに円も迷惑かけてないだろうが!」
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「迷惑をかけてない?」
の奥で、キーンという音の鳴りが鳴り響いた。
「私が千円の靴を買いたいって言ったとき、あなた何て言った? 『計の危がりない』『爪にを灯せ』って言ったわよね? 私が毎、の血管を浮きがらせながら油煙吸って稼いだパート代、円残らず活費座に入れさせておいて……自分の遣いから万? どうやって貯めたのよ、毎万円の遣いから万も!」
「うるさい! 男には付きいもあれば、見栄もあるんだよ!」
夫は私のから見積を引にひったくると、くしゃくしゃに握りつぶしてに叩きつけた。
「親父がくにんで、母さんがどれだけ苦労して俺を学までしてくれたか、おもってるだろ! 男の俺が母親に自由ないさせて、所に恥ずかしいいさせられるか! たかがキッチンのリフォームくらいで、鬼の首取ったみたいに騒ぎてやがって!」
「たかが……?」
「そうだ、たかがリフォームだ! おはが狭いんだよ! 自分の母親じゃないからって、そうやってのことばかりネチネチネチネチ……嫌気のさす女だな!」
夫は肩で荒い息をしながら、私を睨みつけた。
その瞳の奥には、罪悪の欠片もなかった。
あるのは、自分の聖域である「親孝」を汚されたことに対する、勝な被害者識と憤だけだった。
「飯はもういい。おと顔突きわせてう気にならん」
夫はドカドカとい音をてて寝へ向かい、ドアを壊れそうな勢いで叩き閉めた。
バタン、という暴力な音が、狭いダイニングを震わせる。
元には、丸められた青い見積。
テーブルのには、分の私のが詰まった黒い計簿。
私はそのにち尽くしたまま、くことができなかった。
爪がのひらにい込み、微かな痛みがる。
悔しさとけなさで、呼吸の仕方を忘れそうだった。
翌朝、スーパーの惣菜厨は、いつも通りの獄のような気だった。
百度にせられた油のに、凍の豚ロースカツを次々と滑り込ませる。
バチバチと油がね、腕の素肌に微細な傷の痛みがる。
肢静脈瘤を抱えた私の両は、作業始からを過ぎた点で、すでに鉛のようにくなっていた。
「美さん、丈夫? 顔、真っ青よ」
休憩に入った瞬、同僚のが麦茶の入ったコップを差ししてくれた。
代からの友で、私の庭の事も抵はっている唯の相だ。
「……」
パイプ子に腰をろした途端、の裏から突きげるような激痛がり、わず声が漏れた。
私は震えるでコップを受け取り、喉に流し込んだ。
ただのたい麦茶が、胃の奥に染み渡っていく。
「どうしたの? また浩さん?」
が私のに屈み込み、配そうに顔を覗き込んできた。
私は昨の来事を、浄器の削られた互換品のこと、万円の見積のこと、そして夫から浴びせられた罵声を、途切れ途切れに話した。