みかん小説
本棚

"13年前に消えた母の手帳に、夫の昔の名前があった" 第4話

義父が創業したその会社は、2010代初、甲府内の公共事業で起きたあるな事故に関与していた。 作業員が傷を負ったその事故で、点検記録の改ざんが疑われたが、証拠分で問に付されていた。

そして、その当の役員欄。 2013まで、専務取締役として記載されていた名。

「宮本修平」

やはり、あのだった。

母の残したメモが、ので鮮に蘇る。 『会社の古い点検表のことをやたらと気にしてる』

夫は、父親の会社の正を隠蔽するための記録を探して、母のクリーニングに入りしていたのだ。

だが、それだけでは終わらない。 母の失踪当の取りだ。

20131231。 警察の捜査資料や当の報では、母は夕方5過ぎにをた、「甲府駅の方向へ歩いていく姿」をくのコンビニ員に目撃されたことになっていた。

だから私と父は、ずっと、駅周辺や繁華、方へ続く央線の沿線を探し続けてきた。

夫もまた、その捜索に付き添っていた。 「駅の防犯カメラに映っていなかったか、もう度確認しよう」と、何度も私を甲府駅周辺へ誘導していた。

休暇を取り、私は夫に内緒で再び甲府へ向かった。

向かったのは、駅とは真逆の方向。 母のがあった古い商だ。

の記憶を持つを求めて、かつて母のと付きいのあった古い計を訪ねた。

広告

主の老は、母の写真を見せるとくため息をついた。

「千鶴さんか……懐かしいねえ。あのの夕方なら、今でもよく覚えてるよ」

「本当ですか? 母は駅の方へ歩いてったんですよね?」

私がを乗りすと、老は眉をひそめて首を傾げた。

「駅? いや、違うよ。千鶴さんは駅とは逆の、業団の方へ歩いてったんだ」

呼吸が止まりそうになった。

「逆……?」

「ああ。商の角を曲がって、の倉庫の方へね。あそこにはほら、当あの械備会社のきな材倉庫があっただろう。そこに向かって歩いていくのを見たよ」

警察の調と、まるで違う。

「でも、警察は駅へ向かったという目撃証言を……」

「さあねえ。あの頃、警察に何を聞かれたかも定かじゃないが……そういえば、千鶴さんが角を曲がった直、あの備会社の軽トラックが同じ方向へっていったよ」

胃の奥が、激しく波打った。

母は、駅から逃げたのではない。 あの夜、自分から呼びされて、あの会社の倉庫へ向かったのだ。

老の証言を頼りに、私はかつての倉庫があった業団の跡へ向かった。

そこは現、規模な区画理の真っ只で、事用のいフェンスで囲まれていた。 の唸り声が響き、古い建物の解体がんでいる。

私はフェンスの周囲を歩き回り、隣の古い民を軒ずつ訪ねた。

そして、かつてその倉庫の管理を務めていたという、定退職した男性のまいを突き止めた。

島と名乗るその老は、い肺の病を患っており、酸素チューブをに通しながら私を迎え入れた。

「佐藤さんのところの……? いや、あんたは川さんの娘さんか」

島さんは、私の顔を見るなり何かに怯えるように目を細めた。

「の晦、母がここへ来た記録はありませんか」

私がをげて頼み込むと、老はい沈黙の、奥の部から埃をかぶった学ノートを冊持ってきた。

私な業務誌だった。 会社に提するものではなく、老が個につけていた入り記録。

20131231のページ。

老の震える指が、あるを指差した。

『1730分 佐藤社来訪。女性客1名同伴。事務所にて話しい』 『1800分 社の指示により、本の業務終。シャッター施錠』

女性客。 そして、退の記録はない。

「この女性は、母ですね?」

「……顔までは覚えてねえ。だが、社と激しく言い争う声が事務所から聞こえていた。類を返せとか、警察にくとか……」

「母は、そのどうなったんですか!?」

わず老の枯れ枝のような腕を掴んでしまった。 老は顔を歪め、力なく首を振った。

「らねえんだ。俺は社に『もう帰れ、あとは内で話をつける』と鳴られて、追いされたんだから」

が、がたがたと震えした。

母は、この倉庫で義父と会っていた。 そして、度とてこなかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: