"忘れた財布が暴いた、娘の結婚の地獄" 第7話
という鉛のような自責が、その瞬、音をてて砕け散っていくのがれた席の私にも分かった。
「でもね、これからが本当の正です」
真奈美さんの声が、段とく、真剣なを帯びた。
「あの男は、あなたが自分ののから滑り落ちそうになると、絶対に豹変します。最初は泣いて謝り、を贈り、座をして慈を乞う。それでもダメだと分かると、今度は脅し、親族を巻き込み、あなたの社会な評判を奪おうと狂ったように暴れします。支配を失うことが、あの男にとって最の恐怖だからです」
「……はい」
「をたからといって、終わったわけじゃない。物理な距を取るだけじゃダメです。法な続きを踏んで、相の逃げを完全に塞いでください。で話をしては絶対にダメ。専をてて、面だけで械にめてください」
真奈美さんの言葉は、過を乗り越えた者だけが持つ、徹で確かな現実の恵だった。
別れ際、真奈美さんは娘の目をまっすぐに見つめた。
「怖くなったら、いつでも連絡してください。あなたはじゃないから」
カフェをた、横浜のにはたい夜が吹き抜けていた。 けれど、駅へ向かう娘の取りは、先ほどまでとは見違えるほど力かった。 誰かの顔を窺うのではない、自分の志で面を踏みしめる取りだった。
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翌の午、私たちは関内にある『ゆり法律事務所』のい扉を叩いた。
事に予約を入れていたその事務所の応接で、私たちを迎えてくれたのは、50代半ばの落ち着いた女性弁護士、林先だった。
私は持参した茶封筒から、病院の診断、今朝までに撮した娘の傷の写真、そして娘の帳のコピーをテーブルのに広げた。
林弁護士は鏡の奥の鋭い差しで、類の枚枚を無言で確認していく。
「全治週の診断、警察の臨記録、そしてこの継続な記と写真……これだけの客観証拠があれば、配偶者暴力(DV)としての証は極めて固です」
林弁護士の静な言葉に、娘の張っていた肩がわずかに緩んだ。
「相方は、おそらく『なのもつれ』や『夫婦喧嘩の延』と主張してくるでしょう。しかし、警察が介入し、第者の目撃証言もある。これは刑事事件にも発展し得る派な法為です」
林弁護士は帳にペンをらせながら、今の順を確に説した。
「まず本付で、私がさやか様の代理に就任した旨の『受任通』を相方に送達します。これにより、相方がさやか様およびご実に直接連絡を取ること、接触を試みることは法に禁止されます」
「もし……それでも話や押しかけがあったら、どうすればいいですか?」
娘のそうな問いに、林弁護士はきっぱりと言い切った。
「即座に110番してください。接禁止の警告を無した接触は、警察も即座にきます。今はすべての交渉窓が私になります。あなたが相の声を聞く必も、すがるような嘘の謝罪を聞く必も、切ありません」
法という名の固な防波堤が、娘のに築かれた瞬だった。 娘はく息を吐きし、委任状の署名欄に、自分の名を震えることなくしっかりとき込んだ。
事務所をると、の青空がく澄み渡っていた。 たいが頬を撫でたが、議と寒さはじなかった。
実に戻り、リビングでお茶を淹れ直した。 娘は窓のの庭を見つめながら、静かに湯呑みを見つめていた。 その横顔には、もう怯えのはなかった。
「お母さん」
「なあに?」
娘はふっとさく微笑んだ。 それは、この数で度も見ることのできなかった、あの子自の本当の笑顔だった。
「私ね、ずっとあのに謝ってほしいとってた。から反省して、謝ってくれたら許せるかもしれないって、のどこかでってたの」
娘は湯呑みをテーブルに置き、まっすぐに私の目を見た。
「でも、違った。謝罪を待つ必なんて、最初からなかったんだね。あのが反省しようがしまいが、私は今すぐれていいんだよね」
胸の奥がくなった。 相の方によって自分のき方を決めるのではない。 自分が自分であるために、暴力のからちる。