"「次男にこの家を譲ります」義母が宣言したのは私名義の家だった" 第17話
「……そうでしょうね」
当然の帰結だった。 義母が、親戚に「うちの健太は世で、亮介もを広げて順調」と見栄を張り散らかしてきたのだ。 いざ蓋をけてみれば、男は妻の財産を騙し取ろうとして失敗し、次男は倒産寸。 かつて義母の虚栄をヨイショしていた親族たちほど、のひらを返して淡になるのは世の常だった。
「それから、もうつ。子様のことですが」 梨先の声が、しだけトーンを変えた。 「次男の亮介様から、当職宛てに直接相談がありました。実の軒……美咲さんの所物件についてです」
「お義母さんが、何か?」
「階段で、転倒されたそうです」
息を呑んだ。
「怪は……?」
「幸いにして骨折には至らず、腰と膝のい打撲で済んだそうですが……ちがれなくなり、半ほど廊で倒れていたところを、様子を見に来た亮介様に発見されたとのことです」
喉の奥に、苦いものが広がった。 あのは、昭の終わりに建てられた造階建てだ。 基礎や柱はしっかりしているが、昔の設計特の、急で暗い階段がある。 階のベランダに洗濯物を干すため、あるいは来客用の布団をし入れするため、義母は毎あの階段をりりしていたはずだった。
歳。 いくら背筋を伸ばして本の女主気取りでいても、関節の骨は確実にすり減り、筋肉は衰えていく。
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体の老化という物理な現実は、どんな虚飾の鎧をも容赦なく貫通する。
「亮介様は、母を引き取る余裕はにも自宅にもないが、あの広すぎるにで置いておくのは命に関わると仰っています。そこで、ご自ののくにある、エレベーター付きのサービス付き齢者向け宅、もしくはバリアフリーの賃貸マンションへの転居を、母にく説得している最だそうです」
「お義母さんは、何と?」
「最初は『藤澤の本を追いされる筋いはない』『ぬなら畳のでぬ』と激しく抵抗されていたそうですが……今回の転倒で、ご自でも恐怖を骨に染みて理解されたようです。夜に暗い廊で、けずにいたの恐怖が、虚栄を回ったのでしょう」
話を切った、私は窓のを見つめた。 の気配を帯びたが、の空を流れていく。
のを自分のだと信じ込み、急な階段を痛む膝で登り続けていた義母。 あのが本当に守りたかったのは、処などではなかった。 「派な敷にむ、藤澤の奥様」という、砂の楼閣に過ぎない記号だったのだ。 その記号を維持するために、体を痛めつけ、嫁の善を踏みにじり、最は階段から滑り落ちてにいつくばる。
れだった。 けれど、同してを差し伸べる気には、微もなれなかった。
ここで私が「もうしんでいいですよ」とをかければ、あのはまた、その隙に寄して元の傲な老婆に戻るだけだ。
が自分のの丈を受け入れるには、痛みを伴う喪失を経るしかない。
がけたの旬。 港区のあので、退に向けた最終確認がわれることになった。
ち会ったのは、私、梨弁護士、そして次男の亮介の。 夫の健太は、すでに弁護士同士の協議で婚にしており、このには同席させないことを条件にしていた。顔をわせるだけで、法な続きが論で沼化するのを避けるためだ。
扉を押しけると、庭の敷には枯れ葉が吹き溜まり、入れのき届いていた植え込みも伸び放題になっていた。 、義母が「私の自の庭」と親族に吹聴していた所の、これが偽らざる現だった。
玄関をけると、カビと埃の混ざった、え切った空気が肺を満たした。 のついていない内は、よりも底えがする。
「……あ、義姉さん」
居からてきた亮介は、以で会ったよりもさらに痩せこけていた。 作業着ではなく、くたびれたダウンジャケットを着ている。
「寒い、すみません……。母さんは、今、階の荷物をまとめていて……あ、いものは俺が全部ろしたんで、母さんには軽いものだけ触らせてます」
「亮介さん、怪の具はどうなの?」
「あ、打撲の青あざは引いてきました。