"「次男にこの家を譲ります」義母が宣言したのは私名義の家だった" 第9話
私は振り返り、リビングの隅でさくなっている夫を見ろした。
「健太さん」
夫はビクッと肩を揺らし、線をに落としたままかない。
「……、曜ね」
私は徹に告げた。
「私、午は事務所を休むわ。あなたと緒に、川崎の亮介さんのにく」
「え……?」
夫が弾かれたように顔をげた。その瞳には、隠しきれない恐怖が満ちていた。
「な、なんで川崎に……! 俺が亮介と話してくるから、おは来なくていい!」
「いいえ、くわ」
私は夫の目を、逃げを塞ぐように見据えた。
「あなたが私に隠していること。その最の蓋を、の朝、全部けてもらう」
曜の朝。
川崎区の臨部にい業帯。
細いの奥に佇む亮介の自備は、異様な苦しさに包まれていた。
油と属の匂いがち込めるピットには、リフトにげられたまま作業の止まったセダンが台。
その奥の狭いプレハブの事務所に、私と夫、そして青黒い隈を目のに作った亮介が向かいっていた。
テーブルのには、先ほど亮介が部品商社とリース会社の担当者に話をかけ、「担保提供は能になりました」と告げたの、い沈黙が残されている。
相方の号は、スピーカーにしていなくても話から漏れ聞こえていた。
『話が違うじゃないか! 今の夕方までに別の担保か弁済計画がせないなら、契約解除と械の引き揚げ続きに入りますからね!』
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亮介はを抱え、脂汗を滲ませながら震えていた。
「終わりだ……。械を引き揚げられたら、今受けてる修理も全部キャンセルになる……。渡りをして、破産するしかない……」
夫の健太は、爪を噛みながら落ち着きなく貧乏揺すりを繰り返している。
その焦りようは、弟を配する兄の領域をらかに超えていた。まるで、自分自の首に縄がかけられているかのようなパニック。
私はバッグから、今朝自宅をるに用周到にまとめておいたバインダーを取りした。
私の事務所の優秀なスタッフに、朝から配させた調査資料だ。
「亮介さん」
私が静かに呼ぶと、義弟が力なく顔をげた。
「械を引き揚げられて、破産するのはあなたじゃないわね?」
「……え?」
「美咲、もういいだろ!」
夫が突然、叫ぶように割り込んできた。
「亮介はもう分に追い詰められてるんだ! これ以、責めてるような真似をするな! 帰るぞ!」
夫が私の腕を掴もうとを伸ばしてきた。
私はそのを、たく振り払った。
「触らないで」
夫が息を呑む。
私はバインダーをき、枚の類をテーブルのに叩きつけた。
それは、夫の斎の鍵付き引きしから、今朝私が見つけした封筒の。
川崎の信用保証協会、そして械リース会社から夫の個名宛てに届いていた、『催告通』のコピーだった。
そこには、はっきりと印字されていた。
【主債務者:藤澤亮介】
【連帯保証:藤澤健太】
亮介が、目を見いて兄を見た。
「兄貴……? これ……」
夫の顔から、急速に血の気が引いていった。
唇がワナワナと震え、瞳孔が激しく揺れている。
「よ」
私の声は、自分でも驚くほど静かだった。りを超え、い奈落を見つめるような気配を帯びていた。
「亮介さんがこのを拡張して、千万円の械リースと運転資の融資枠を引いた。融関は、個事業主である亮介さんの信用では審査を通さなかった」
「美咲、それは……」
「設備販売会社の営業課で、勤続、定した与所得のあるあなたに、羽の矢がったのね。あなたは亮介さんに頼まれて、私に言の相談もなく、千万円の債務の『連帯保証』にサインした」
亮介が息を呑んだ。
「兄貴……嫂さんに言ってなかったのか? 俺、てっきり嫂さんもったで、兄貴が保証になってくれたんだと……」
「言えるわけがないでしょう」
私は夫から線をさず、淡々と事実を紡いだ。
「会計士の妻に相談すれば、事業計画の甘さも、返済原資の透さも、すべて見抜かれて止められるに決まっているから。だからこのは、妻に隠れて実印を持ちし、連帯保証契約を結んだ」
そう。
本の法律において、連帯保証は、主債務者とまったく同じさの返済義務を負う。