"大手術の3日後、夫が勝手に進めていた旅館の経営移管" 第14話
……私のカルテの記録と照してみますか?」
相澤真理子の顔から、完璧な営業用スマイルが剥がれ落ちた。
「そ、それは……俊介さんが、代表の向だとおっしゃったからで……!」
「責任転嫁はそこまでにしていただきましょう」
野寺先がにみて、元の類をく掲げた。
「株式会社見荘の商業登記簿謄本です。本法の取締役は望綾子氏名のみ。株主も望綾子氏が百パーセントを保しております。支配である望俊介氏には、会社法、業務委託契約や経営権の移譲に関する代表権は切しません」
野寺先の厳格な声が、広に響き渡る。
「したがって、本発表されようとしていた運営体制、ならびにA-Hospitalityとの包括業務提携は、すべて無権代理による無効な為です。株式会社見荘は、本件計画を切承認しておらず、今もいかなる契約も締結いたしません」
ざわり、と広がきく揺れた。
「おい、俊介……どういうことだ?」
温泉組の理事がちがり、険しい顔で夫を問い詰めた。
「俺たちは、女将さんの解が取れてるって聞いたからここに来たんだぞ!」
「ち、違うんです! これは誤解で……!」
夫は取り乱し、ネクタイを引っ張りながら私に詰め寄ってきた。 その目は血り、獣のように見かれていた。
「綾子! お、自分が何をしてるかわかってるのか!? こんな勢ので、夫に恥をかかせて……旅館の信用はどうなるんだ!」
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「旅館の信用を傷つけたのは、あなたよ」
「俺はおのためをってやってきたんだ! その体で、これからも全部自分で背負い込む気かよ!? おに何ができる! 病に何が仕切れるって言うんだ!」
広にいた全員が、息を止めた。 病に倒れた妻を気遣うはずの夫が、衆環ので吐き捨てた、剥きしの悪と見し。
私は、取り乱す夫を真っ直ぐに見つめた。 逃げもせず、目を逸らしもせず。 痛む腹部を静かに抱えながら、たく澄み切った声で、その問いを投げ返した。
「病気になったら、私のも仕事も、あなたのものになるの?」
夫のが、半きのまま固まった。
「私が病に倒れたら、母の遺した旅館も、積みげた信用も、私のき方すらも、全部あなたの好きにしていい権利がまれるとでもっていたの?」
夫は何も言い返せなかった。 喉をひくひくと鳴らし、ただ私を見ろしたままち尽くしている。
「私はまだ、きているわ」
私は広の全員を見渡した。 そうに私を見つめていた仲居たち、困惑する取引先、そして軽蔑の目を夫に向ける来賓たち。
「ご列席の皆様。本は私の体調管理の届きと、社内統制の備により、皆様に変なご迷惑とご配をおかけしましたことを、よりお詫び申しげます」
私はもう度、く、静かにをげた。
「見荘は、これまで通り、私、望綾子が代表として守ってまいります。私どもの信条であるおもてなしのは、何つ変わりません。本の際につきましては、、私から改めて件ずつご挨拶とお詫びに伺わせていただきます」
をげると、観協会の会がく頷き、静かに席をった。 それに続くように、の支も元の類を鞄にしまい、無言で夫の横を通り過ぎて広をてった。
相澤真理子は、すでに逃げるように荷物をまとめ、誰とも目をわせずに広からりっていった。
潮が引くように、がっていく。 残されたのは、料理が付かずのままえ切った円卓と、泣き崩れる仲居たち。 そして、演台ので抜け殻のようにち尽くす夫だけだった。
「……綾子」
掠れた声で、夫が私の名を呼んだ。
私は瞥もくれず、由美の肩にを置き、踵を返した。
広をて、静まり返ったい渡り廊をむ。 背から、ドタドタと乱暴な音が追いかけてきた。
「待てよ! 綾子、待てって言ってるだろ!」
腕を掴まれそうになり、由美が鋭く割って入った。 ち止まり、私が振り返ると、そこにはネクタイを引きちぎり、髪を振り乱した夫がっていた。
「満かよ……!」
夫の目から、粒の涙がこぼれ落ちていた。 悔しさと、プライドを々に砕かれた男の、醜い涙。
「これで満か!? 俺を伊豆の笑い者にして、俺のキャリアを完全に終わらせて……おは満なのかよ!」