"大手術の3日後、夫が勝手に進めていた旅館の経営移管" 第12話
男のメンツ。世体。 妻が腹を切られ、を彷徨っていたその裏で、自分が支配面をしていい格好をするために、嘘をばら撒いていただけのくせに。
「相澤真理子から脅迫メールが届いたわ。百万払えって」
夫の目が、わずかに泳いだ。
「そ、それは……あっちだってをかしてるんだから、当然の経費だろ……」
「あなたが個に払えばいいじゃない。あなたの独断で呼んだんでしょう?」
「払えるわけないだろ、そんな! だから契約を結べって言ってるんだ! 契約さえ結べば、あのは見荘の経費として処理できる! おが判子をつ押せば、全部丸く収まるんだよ!」
どこまでも、自分の保。 どこまでも、私と旅館を自分の借のゴミ箱としか見ていない。
「おは酷すぎる」
夫は急に声を落とし、れみを乞うような湿った目で私を見つめてきた。
「……俺はおのとして、この旅館に尽くしてきたんだぞ。旅会社にをげ、理尽な客のクレームを処理し、おの母親の嫌を取り……俺の青のすべてを見荘に捧げてきたんだ。その俺が、たった度、自分の力でしい挑戦をしようとしてるんだぞ。妻なら……妻なら、黙って背を押してくれたっていいじゃないか」
を帯びた、勝極まりない被害者の演説。 、私が夫に抱いてきたと謝の残滓が、その言葉を聞いた瞬、完全にになって消え失せた。
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私はゆっくりと、痛む体を起こした。 シーツを握り締め、夫の目を真正面から見据える。
「俊介さん」
「……なんだよ」
「働いてきたことと、勝に奪っていいことは違うでしょう」
静かな、しかし芯の通った私の声に、夫の呼吸が止まった。
「あなたは見荘の従業員として働き、会社から毎正当な料を受け取ってきたわ。営業成績に応じた当もしてきた。私はあなたを度だってタダ働きさせたことはない」
「料の問題じゃない! 俺は経営者になりたかったんだ!」
「なら、自分でから融資を引いて、自分の旅館をからちげればよかったのよ」
私はベッドの柵をく握り、言葉をねた。
「あなたはリスクを切背負わず、私の母が血の汗を流して作った信用と建物を、私が病気で倒れた隙に横取りしようとした。それを世では『挑戦』とは言わないの。『棒』って言うのよ」
夫の顔が、りと屈辱で引きつった。 ちがり、拳を振りげそうになる夫のに、私は野寺先から受け取った通の控えを突きした。
「にも、観協会にも、すべて弁護士を通じて事実関係を説する面を送るわ。あなたがこれ以暴れるなら、今すぐ警察を呼んで業務妨害で被害届をす」
夫の拳が、空で震えた。
「……悔するぞ」
夫は震える唇から、呪いのような言葉を絞りした。
「おみたいな血女、もう妻でも何でもない。レセプションは絶対にくからな。真理子と緒に、みんなのでおの正体を暴いてやる!」
夫は背を向け、ドアを壊さんばかりの勢いで蹴破るようにしててった。
廊から、由美が駆け込んでくる。
「お姉ちゃん! 丈夫!?」
「……ええ」
私はベッドにく沈み込み、荒い息をえた。 傷がズキズキと激しく脈打っている。 だが、のは、かつてないほど透き通っていた。
もう、迷いはない。 あの男は、最まで自分の過ちを認めることはない。 なら、終わらせるしかない。 あの男が信じる「世」の目ので、すべてをのに晒して。
週。 曜、午分。
初のい差しが、伊豆の々を鮮やかに照らししていた。
見荘の玄関には、級セダンが何台も滑り込んできていた。 元の観振興会の幹部、温泉組の理事たち、伊豆の名士たちが、訝しげな表を浮かべながら簾をくぐっていく。
本館階、広「富士の」。 百畳敷きの広には屏がてられ、円卓には豪奢な仕し料理と乾杯用のシャンパングラスが並べられていた。
座の演台の横には、濃紺のオーダーメイドスーツで着飾った夫が、胸を張ってっていた。 その隣には、純のタイトスカートスーツにを包んだ相澤真理子。
は自信満々の笑みを浮かべ、来賓たちにを振りまいていた。