"大手術の3日後、夫が勝手に進めていた旅館の経営移管" 第8話
『俊介さんから、きちんとお聞きになっていないのですか? 私どもがこのプロジェクトを本格に始させたのは、の――の初め頃からですよ』
の。
由美が横で息を呑んだ。
『俊介さんは随分から、見荘の旧態依然とした経営体制に危を抱いておられましたわ。「妻は守ることしか考えない。このままでは旅館が潰れる。自分がトップにってしいを吹かせたい」と。何度も私どものオフィスにを運んで、に相談してくださったんです』
「の……」
私の声が、微かに震えた。 りではない。 あまりの残酷さに、全の血が凍りついていく覚。
「の、私は何の病気も患っていませんでした。健康そのもので、毎朝から晩まで帳にっていました」
『……え?』
「なぜ、私の体に何の異変も起きていなかった期から、『私の期療養に伴う運営移管』の準備がんでいたのかしら?」
話の向こうの空気が、完全に凍りついた。 相澤真理子の揺が、受話器越しに々しく伝わってくる。
『それは……その……俊介さんから、いずれ代替わりをするという提でお話を……』
「相澤さん。あなたは、夫と何を企んでいたの?」
『め、滅相もございません! 私どもは正当なビジネスの提案をしているだけで……』
「正当なビジネス? 代表取締役の私の預かりらぬところで、従業員である夫と結託し、虚偽の議事録を作成して既成事実を作ることが、あなたの会社の『正当なビジネス』なの?」
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『……望社、言葉にトゲがありますわね』
き直ったのか、相澤真理子の声から営業用のが消え失せ、淡なが剥きしになった。
『形式な続きが追いついていないことは認めます。ですが、私どもはすでにくのと員をこのプロジェクトに投じておりますの。今さら撤回などできません』
「撤回も何も、契約自体が成していません」
『俊介さんは、あなたがいずれ承諾すると断言されましたわ。それに……ご自の体調をよくお考えになったほうがよろしいのではなくて? 復帰もままならないお体で、これからどうやって旅館を回すおつもり? 私どもとを組むのが、見荘にとっても、あなたにとっても唯のき残るですのに』
「私の旅館の配をしていただく筋いはありません」
『……悔なさいますよ』
相澤真理子はたく吐き捨て、通話を切った。
ツーツーという乾いた子音。
病の空気が、鉛のようにい。 の。 半以もから、あのは面で繋がっていた。
夫が夜遅く「旅会社の幹部との接待だ」と言ってかけていた夜。 「しい営業ルートを拓している」と誇らしげに語っていた週末。 あののすべてが、この女との密会であり、私から見荘を奪い取るための謀議だったのだ。
そのの夕方。
病のドアが乱暴にかれた。
入ってきたのは、血相を変えた夫だった。
「綾子! お、相澤さんに何を言ったんだ!」
夫は私のベッドに詰め寄り、掛け布団を掴んで鳴り散らした。 充血した目。 乱れたネクタイ。 そこには、かつての穏やかな夫の面など、微もなかった。
「相澤さんから連絡があったぞ! 契約を見直すかもしれないって! お、余計なこと言って俺の邪魔をするなと言ったのがわからないのか!」
私は、鳴る夫をえ切った目で見つめ返した。
「のから、あの女と会っていたのね」
夫の言葉が、喉元でピタリと止まった。
「……な、何を言ってるんだ」
「仕事の話だけじゃないでしょう。半から、で何をしていたの?」
「だ、だから! 旅館の将来のために、コンサルティングを受けていただけだ!」
「嘘をつかないで!」
私の鋭いに、夫の肩がビクッとねた。
「の、私は健康だった。術の話なんても形もなかった! なのに、なぜあの女は『綾子さんの療養に伴う移管準備』を半からめていたの? 答えてよ、俊介さん!」
夫の顔が、みるみるうちに赤黒く染まっていく。 嘘が破綻したの、見苦しい揺。
線が泳ぎ、唇が刻みに震える。
「……そ、それは……」
「男女の関係があったのね」
逃げを塞ぐように、私は酷に突きつけた。
「否定できる? 携帯の通話履歴、ホテルの細、調べればすぐにてくるわよ。