"大手術の3日後、夫が勝手に進めていた旅館の経営移管" 第4話
母の代から見荘を支えてくれたたちを、切り捨てる気なのだ。
血の気が引いていくのをじながら、私は添付された最の画像をいた。 それは、枚の会議記録だった。
タイトルには、こう記されていた。
『株式会社見荘・株式会社A-Hospitality 業務提携に関する協議録』
本文の冒に、太字で印刷された文字が私の目にび込んできた。
『望綾子代表取締役は、体調良による期療養に伴い、本旅館の運営権および販売管理権を部専関へ包括に委託することに原則した。本に基づき、望俊介支配を統括責任者とする移委員会を設置する』
……原則? 包括委託?
そんな言葉、度たりともにしたことはない。
私は画面をさらにスクロールし、その会議録が作成された付に目を凝らした。
令――。
その付を見た瞬、全の毛穴が逆つような悪寒がった。
その、その。 私はこの病院の検査で、腹部に太い針を刺され、検の激痛に涙を流しながらで耐えていたのだ。
夫は「旅館の急な来客対応があるから」と言って、検査に付き添わなかった。
あの、夫は京のあの女と密会し、私がそのにいたかのように偽りの議事録をでっちげていたのだ。
「……嘘つき」
乾いた呟きが、静まり返った病に落ちた。
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夫が元で囁いた言葉が、恐ろしい解像度で蘇る。
『ようやく、俺のやり方でできる』
あのは、私の回復を待っているのではない。 私が度と見荘の敷居を跨げなくなるを、ぐすね引いて待っているのだ。
私はスマートフォンの画面を伏せ、シーツをぎゅっと握りしめた。 点滴の管を通して、たい薬剤が体内に流れ込んでいく。
痛む腹部にを当て、私はく、く息を吸い込んだ。
――私は、まだきている。
誰にも、渡さない。 母が命を削って遺したこの所を、あんな男と女の玩具になんて、絶対にさせない。
震える指先で、スマートフォンの画面を何度もスクロールした。
画面に映る『協議録』の文字が、網膜に焼き付いてれない。
『望綾子代表取締役は、体調良による期療養に伴い、本旅館の運営権および販売管理権を部専関へ包括に委託することに原則した』
作成――令。
腹部の傷が、引き裂かれるように疼いた。
あのの午。 私は総病院の処置で、たい属の台のに横たわっていた。 局部麻酔の針が肉を裂く鈍い音と、組織を採取される激痛に、歯をいしばって耐えていた。
恐怖で涙がこぼれそうになる私に、夫は朝、こう言って病院をてったのだ。
『事な取引先との会があるから、付き添えなくてすまないな。
終わったらすぐ連絡をくれ』
事な取引先。 それが、あの女だった。
私が病で、自分の命の方に怯えていたまさにそのに、夫は相澤真理子とテーブルを挟み、私の名を騙って旅館の売り渡しを約束していた。
胃の底から、黒いのようながせりがってくる。
吐き気と激痛で呼吸が浅くなり、モニターのアラームがさく鳴った。
ガラリ、と病の引き戸がく。
「お姉ちゃん!」
入ってきたのは、沼津から駆けつけてくれた妹の由美だった。 にげたボストンバッグをに落とし、私の青ざめた顔を見て駆け寄ってくる。
「息が荒いよ。ナースコール押す? 先呼ぼうか?」
「……ううん、丈夫。呼ぶほどじゃないの」
私は掠れた声で首を振り、ベッド脇のテーブルを顎で指した。
「由美……それより、スマホを見て。芳さんから送られてきた画像を」
由美は審そうに眉をひそめながら、私のスマートフォンをに取った。 添付された何枚もの類をめくっていくうち、妹の顔から急速に血の気が引いていくのが分かった。
「……何これ。経営移管? 相澤真理子の会社に?」
「俊介さんが……私が術に入った直から、現をかしてるの」
「お姉ちゃん、これ『原則』っていてあるけど……判子、押したの?」
「押すわけないでしょう!」
わず声を張りげ、腹部に激痛がってさく呻いた。
由美が慌てて私の肩をさする。
「無理しないで! わかってる、お姉ちゃんがこんなの承諾するはずないってことくらい」