みかん小説
本棚

"「お母さんのところに行きたい」9年後に届いた娘の声" 第17話

と泣き叫んでいた女は、もうどこにもいない。 傷を抱え、痛みを引き受け、それでも自分のでちがった、美しいの女性が目のにいる。

失われたは、どう掻いても戻らない。 学の卒業式も、の入学式も、歳の成式も、私はあの子の隣にいてやれなかった。 その空は、消えることのない欠落として、私の胸に残り続けるだろう。

けれど。 過を呪い、誰かをんできる必は、もうどこにもなかった。

私たちは、しいを、ここから始めることができるのだ。

「……結」

顔をげると、結がそうに、けれど温かいを宿した瞳で私を見つめていた。

「どうかな……。寒いかな」

「寒いに決まってるじゃない、のなんて」

私が涙声で笑うと、結も釣られたように吹きした。

「でも、くわ」

私はを胸にく抱きしめ、娘の目を見て、はっきりと告げた。

「絶対に、く。で、美しいものでもべて、に吹かれて……しい写真を、いっぱい撮りましょう」

「うん!」

結の顔に、満の笑顔が咲いた。 歳の頃と同じ、屈託のない、私の好きな娘の笑顔だった。

のにると、夕暮れの空はい茜から、夜のへと静かにグラデーションを描いていた。 たいが頬を撫でていく。 けれど、私の体の芯には、決して消えることのない確かなが宿っていた。

のにあるの温もりをじながら、私はを向いて歩きす。

の孤独の果てに、ようやくに入れた、私と結の、しくて温かい常が、今、静かに始まろうとしていた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: