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"「お母さんのところに行きたい」9年後に届いた娘の声" 第16話

「受け取ります」

私はしっかりと頷き、封筒を両で受け取った。

「誠さんが、自分のでちがってくれたこと、本当に嬉しい。 ……結にも、伝えていいですか?」

誠さんは瞬だけ躊躇うように線を揺らしたが、やがて静かに首を横に振った。

「いいえ。俺から結ちゃんに伝える顔はありません。 俺がしたことは、おを返したくらいで消える罪じゃないですから。 ただ……結ちゃんが今、幸せに向かって歩んでいることだけを、くから祈っています」

誠さんはちがり、もう度くをげた。

「兄貴とは、完全に縁を切りました。 これからは、誰の顔も窺わず、自分の責任できていきます」

「お体に気をつけてね。怪をしないように」

「はい。真紀さんも、どうかお元気で」

をていく誠さんの背は、真っ直ぐに伸びていた。 過の嘘を清算し、自分のを取り戻した男の、力い歩幅だった。

私はのの万円を、のレジではなく、私のプライベートの財布の奥に切に仕い込んだ。 それは、の悪が、完全に終わったことを告げる証拠だった。

そして、あのから半が過ぎた、穏やかな曜。

の旬。 の気配を含んだ澄んだ空気が、板のを包んでいた。

曜の夕方、結はふらりとに現れた。 いつものように、エプロンを借りてテーブルを拭き、調料の瓶を補充し、打せの終わった仕込みの片付けを伝ってくれた。

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無理に会話を交わす必はなかった。 お互いがそこにいること、それぞれの活を持ちながら、々こうして交差すること。 その静かな空気が、今の私たちにとって最もよいものになっていた。

「ふぅ、終わった!」

最のゴミ袋を結び終えた結が、額の汗を拭いながら伸びをした。

「お疲れ様。お茶にする? それとも何かべる?」

「ううん、お腹は空いてない。……それより、お母さん」

結はエプロンをし、パイプ子に腰をろした。 自分の革のトートバッグから、何かを取りそうとして、しだけ躊躇うように指先を止める。

「……何?」

結はさく息を吸い込み、バッグの底から通の封筒を引きした。

切も貼られていない、真っな角形のさな封筒。 表には、しびた、けれどあの頃の面を残す結の跡で、こうかれていた。

『お母さんへ』

私の臓が、トクンとさくねた。

、誠さんによって阻まれた。 、公衆話の絶望の果てに届いた、拒絶の。 そして今、目のにある、真っな封筒。

結は両でその封筒を持ち、私のに差しした。

「これ、受け取って」

震える指で、私はそれを受け取った。 郵便受けを通さず、誰のも介さず、娘のから直接渡された。

「今度はね」

結はし照れくさそうに、眉をげて笑った。

「ちゃんと届くように、直接渡したかったの。

ポストに入れちゃうと、また誰かに邪魔されそうな気がして」

「……けてもいい?」

「うん」

私は封筒の蓋を指でき、からつ折りにされた便箋を取りした。 広げると、丁寧な文字で、い文章が綴られていた。

『お母さんへ。

、待たせてごめんなさい。 そして、私を探してくれて、待っていてくれて、ありがとう。

あの頃の私は、お母さんに捨てられたとい込むことで、自分を守っていました。 お父さんを責める気持ちも、まだ完全には消えていません。 失われたのさに、々、途方に暮れそうになることもあります。

でも、お母さんの作ってくれた甘い卵焼きをべた、私のにあったの氷が、全部溶けていくのが分かりました。 私は、されていなかったわけじゃなかった。 その事実だけで、私はこれからのを、ちゃんとを向いてきていけます。

来、仕事の休が取れそうです。 もしお母さんのの都が良ければ……で、にきませんか。

歳の、族でったきり、私、を見ていません。 になった私と、お母さんとで、 しい写真を、撮り直したいです。

結より』

涙が、音もなく便箋のに落ちた。 インクが滲まないよう、私は慌てての甲で目を拭った。

歳のあの、ので「お母さんのところにきたい」

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