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"「お母さんのところに行きたい」9年後に届いた娘の声" 第15話

なのに、私自が、無識のうちに同じことをしていたのだ。 「の空を取り戻したい」という自分のエゴを、母親のという綺麗な包装で包んで、歳の自した女性に押し付けていた。

血の気が引いていくのが分かった。

「……ごめんなさい」

私のから、絞りすような謝罪が漏れた。

「……本当に、ごめんなさい。私、どうかしてた」

結はテーブルのに突っ伏し、荒い息を繰り返した。 苦しい沈黙が、のに流れる。

どれくらいのが経っただろうか。 結が、ゆっくりと顔をげた。 その瞳から、刺々しいりは消えていた。ただ、疲れ果てたが残っていた。

「……私の方こそ、ごめんなさい。鳴ったりして」

結は乾いた唇を舐め、さく息を吐いた。

「私ね、嬉しかったの。お母さんが配してくれるの、最初はずっと欲しかったものだったから。 でも……私、、お父さんとで暮らしてきて、自分のことは自分で決めるしかないっていながらきてきたの。 だから、急に全部を委ねることはできないの。 ……お母さんのことは好きだけど、私は私の活を守りたい」

私は、くをげた。

「結の言う通りよ。 私が違ってた。の穴埋めをしようと焦って、の結を見ていなかった。 ……教えてくれて、ありがとう。言ってくれなかったら、私、また同じ違いを繰り返すところだった」

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結はし驚いたように目を見張り、それから、ふっと微かに笑った。

「お母さん、素直だね」

「これでも、でを切り盛りしてきたからね。自分の非を認めないと、商売なんてやっていけないの」

自嘲気に言うと、結のからクスリとさな笑い声が漏れた。

準備していた量の惣菜のタッパーから、私は筑煮のパックをつだけ取りし、さな袋に入れた。 残りのクーラーバッグは、調理台の奥に隠した。

「これ、今べる分だけ。凍のストックは、本当に困ったがあったら言って。そのに送るから」

結は袋を受け取り、嬉しそうに頷いた。

「うん。これ、今夜のアパートでべるね」

適切な距。 親であっても踏み込んではいけない、の自したとしての境界線。 私たちは、痛みを伴いながら、ようやくそのラインを見つけすことができたのだ。

季節は巡り、がの杏を黄く染め始めた頃。

平の昼がり、ランチの営業を終えて片付けをしていると、の引き戸が静かにいた。

「いらっしゃいませ」

洗いから振り返った私は、そこにっている物を見て、持っていた布巾を取り落としそうになった。

仕ての良い、紺のスーツ。 きちんと切りそろえられた髪。 背筋をピンと伸ばし、落ち着いた差しでこちらを見つめている男。

誠さんだった。

あの、区役所ので震えていた面は、どこにもなかった。 頬の肉づきは健康に戻り、浅黒く焼けした顔には、働くの精悍さが宿っていた。

「……誠さん」

「ご無汰しております。真紀さん」

誠さんは丁寧にをげた。 その所作には、かつての卑屈さも、傲さも微もなかった。

「お忙しいところ、すみません。しだけ、おをいただけますか」

私は誠さんをテーブル席に案内し、いお茶をした。

誠さんはスーツの内ポケットから、さない封筒を取りし、両でテーブルの央に置いた。 表には、楷で丁寧に私の名がかれている。

「あの、お借りした万円です」

封筒を見つめたまま、私は息を呑んだ。

「区役所の紹介で、郊にある産業廃棄物のリサイクル処理施設に採用されました。 最初は週の仕分け作業からでしたが、先からフルタイムの契約社員になりました。 寮にも入ることができて……先週、まとまったお料をいただきました」

誠さんの声は、静かで、けれど誇らしさに満ちていた。

「これは、俺が自分ので稼いだおです。 真紀さん、あの、俺を見捨てずにいてくれて……本当に、ありがとうございました。 あの万円がなかったら、俺は今頃、寒空ので野垂れんでいたといます」

私はテーブルのの封筒にを伸ばした。

みのあるの触が、指先に伝わってくる。

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