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"「お母さんのところに行きたい」9年後に届いた娘の声" 第6話

制を着ていた学の面は、ほとんどなかった。 すっかりの女性の骨格になり、化粧をく施した横顔は、私が鏡で見る自分の代の頃と酷く似ていた。

「……結」

さく唇がいたが、声にはならなかった。 だが、その線が私を捉えた。

結のが止まった。 瞳が瞬だけきく見かれ、唇が微かに張る。 しかし、駆け寄ってくるようなことはなかった。

ゆっくりとした取りで、私のの席へ歩いてくる。 子の背にをかけ、会釈をした。

「お久しぶりです」

儀な、どこかビジネスののようない挨拶だった。 「お母さん」という言葉は、なかった。

「……座って。寒かったでしょう」

私が言うと、結は無言でコートを脱ぎ、向かい側の革張りのソファに腰をろした。 注文を取りに来たウエイターに、結は迷うことなく「ブレンドをつ」と頼んだ。

その淀みのない声を聞きながら、私は胸の奥が締めつけられるのをじていた。 コーヒーのすららなかった子供が、いつのにか、の顔をしてブラックコーヒーをむようになっている。 その成のすべてを、私は見届けることができなかったのだ。

ウエイターがちると、テーブルのに苦しい沈黙が落ちた。

結は運ばれてきたを含み、まっすぐに私を見つめた。 逃げも隠れもしない、志のい目だった。

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「……誠叔父さんから、全部聞きました」

結がく切りした。

「あの録音のこと。叔父さんが、お母さんに渡したって」

「……うん」

私はバッグから、あのの械を取りし、テーブルの央に置いた。 傷だらけのプラスチックの塊が、喫茶の柔らかい照に照らされる。

結の線が、録音に吸い寄せられた。 その喉が、度さくする。

「あの……歳のののこと、覚えてる?」

私の問いに、結は線を落としたまま、静かに頷いた。

「覚えてる。……学の帰りに、誠叔父さんのに乗せてもらって、どうしてもに帰りたくなくて。 お父さんが毎、お母さんの悪を言うのが耐えられなかった。 おを育てるために俺がどれだけ苦労してるか、お母さんは京で好き勝に暮らして男を作ってるかもしれない、おまで俺を捨てるのかって……毎、泣きながら鳴られてた」

結の指が、テーブルクロスをく握りしめた。

「怖かった。お父さんを見捨てたら、本当にんじゃうんじゃないかって。 でも、私はお母さんのところにきたかった。 だから叔父さんに泣きついて、声を録音してもらったの。お母さんに届けてって。 ……でも、何待っても、お母さんは迎えに来なかった」

「結、私はその録音を――」

「ってる」

結は私の言葉を遮った。 その声には、たいりのようなものが混じっていた。

「お父さんが叔父さんから奪い取って、隠したんでしょう。 誠叔父さんから聞いた。……でもね、お母さん。問題はそこだけじゃない」

結はバッグから、枚の折り畳まれたを取りした。 広げられたその便箋を見て、私の臓が痛烈に軋んだ。

歳のに届いた、あののコピーだった。 『もう、無理に連絡をしてこないでほしい』とかれた、あの通。

「これは、私が自分のでいた」

結はたい声で言った。

「誰かに制されたわけじゃない。私が、歳のに、自分の志でお母さんに送ったの」

「……どうして」

喉が絞まるようないで尋ねた。

「お父さんがね、ずっと言ってたの」

結の線が、私を射抜いた。

「『お母さんは京でしいを始めて、自分の活で杯なんだ。おがいつまでも甘えて連絡したら、お母さんの邪魔になる。あいつはおを放して清々してるんだ』って。 最初は信じなかった。でも、面会の約束はいつもドタキャンされて……お父さんは『お母さんの方から用事が入ったって連絡があった』って言った」

「そんなこと、度も言ってない!」

わずを乗りして叫びそうになり、慌てて声を落とした。

「度だって、私から断ったことなんてない! 宮の駅で、も待ったことだってあったのよ!」

「……らなかった」

結の唇が震えた。

「お父さんは、私にはそう言ってた。

お母さんが来られなくなったって。 私、歳の誕のの週、お父さんの携帯を盗み見たの。

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