"私を笑った義母が、帰り際に「結婚しないで」と手紙を残した" 第13話
「美穂」
母は顔をげ、私のをそっと握った。
「結婚式を直でやめるなんて、親戚やご所には々と言われるかもしれない。でもね、の噂なんて半もすれば消えるわ」
母のは、温かかった。
「番恐ろしいのは、の目を気にして、自分が壊れていく所へを踏み入れることよ。キャンセル料も、世体も、お母さんが半分背負う。だから、絶対に妥協しちゃだめ」
「……ありがとう、お母さん」
母の言葉に、胸の奥のたい結界が溶けていくようだった。 でも、おは自分で払う。 これは、私が自分のの主権を取り戻すための、私自の買い物だから。
数。 京都内の静かな本料理の座敷に、つのが落ちていた。
のの輪挿し。 障子越しに差し込む午の。 苦しい沈黙を破ったのは、座に座る正雄さんだった。
歳の祖父・源さんは、腰の痛みを理由に今回は同席していなかった。 だが、その傲な気配は、父親である正雄さんの全に濃く宿っていた。
「わざわざこんな所を改まって指定して、体何の真似だ」
正雄さんはされたほうじ茶にもつけず、腕を組んで私を睨みつけた。
「回の打ちわせを途で放りした無礼を、まずは詫びるのが筋だろう。直から聞けば、業やまいのことで々と満を並べてているそうじゃないか。
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森川のに嫁ぐという自覚が、根本から欠如している」
隣に座る直は、線をテーブルに落としたまま、神妙な顔を取り繕っていた。 言も発さず、父親のりの威を借りて私に圧をかけようとしている。
その直のさらに隣。 入りの襖のに、千鶴さんが座っていた。 濃紺のなスーツを着て、膝ので握りしめた指の関節がくなるほど力を込めている。 私と目がった瞬、千鶴さんは怯えるように線を逸らした。
私はく息を吸い込み、背筋を伸ばした。 そして、バッグから取りした冊のクリアファイルを、テーブルの央へ静かに滑り込ませた。
「本は、お詫びをするために参ったのではありません」
私の澄んだ声が、静かな座敷に響いた。
「森川直さんとの婚約を、本付で解消させていただきます」
座敷の空気が、ピシリと凍りついた。
正雄さんの眉が吊りがり、顔が朱に染まっていく。
「……な、何を言っているんだ?」
「式にはすでに連絡を入れ、解約続きの類を取り寄せてあります」
私はファイルをき、式の解約と、発する違約の細を提示した。
「発する費用について、双方が契約負担すべき額を精査いたしました。私が配した装や引き物、招待状の印刷費用については、すべて私が全額支払います。
共通の会費等のキャンセル料についても、半分は私が本に振り込みます」
事務な、切のを排した説。
正雄さんはりのあまり言葉を失い、テーブルを拳で激しく叩いた。 湯呑みがガタガタとねる。
「ふざけるな! たかが若い者の論くらいで、親族に恥をかかせる気か! もう招待状も配り終えているんだぞ! 直の顔にを塗る気か!」
「顔にを塗ったのは、どちらでしょうか」
私は正雄さんの目を真っ向から見据えた。
「私は、直さんと対等なパートナーとしてきていく約束をねてきました。京都にみ、私の仕事を続け、互いに尊しうと。しかし、直さんはご族に対し、私を部の実へ転居させ、仕事を辞めさせて業と介護に従事させると約束していたそうですね」
直の肩が、ビクッとねた。
「直! お、そんなことを……!」
正雄さんが息子を睨みつける。 直は青ざめた顔でごもり、激しく線を泳がせた。
「ち、違うよ! 俺はただ、将来に実を助ける選択肢もあるって、父さんたちをさせるために言っただけで……!」
「嘘をつかないで」
私の声が、直の言い訳をたく切り裂いた。
「あなたはこの、私ので本音を叫んだじゃない。『今は俺が従う番で、そのうち俺が決める番になる』『俺がになったら俺の言う通りにいてもらう』って」
直の顔から、完全に血の気が引いた。
「女に仕事を続けさせるのも、子供のことも、介護のことも、全部自分が支配する権利をに入れたらい通りにできると、あなたはそう言いました。