"私を笑った義母が、帰り際に「結婚しないで」と手紙を残した" 第9話
プランナーから事に提示されていたタイムテーブルでは、郎側・婦側の来賓挨拶はそれぞれ分と決まっていた。 祖父が分も演説を打てば、全体のスケジュールは完全に崩壊する。
「おじい様、の都、乾杯までのは限られておりまして……」
私が静かにを挟むと、祖父の太い眉がピクリとねがった。
「なんじゃと?」
「婦側の恩師や取引先の方々もお招きしております。どなたかおだけがくお話しされると、全体の歓談や料理の提供に響がてしまうと、式の方からも伺っています」
空気が、瞬で凍りついた。
正雄さんがバン、と湯呑みをテーブルに叩きつけた。
「美穂さん、君はうちのに向かって何を指図しているんだ」
酷な、く圧し殺した声だった。
「森川のの式だ。費用をどちらがくすかという問題ではない。この婚姻によって、君ががの列に加わるという事実を、世に正しく披するためのだぞ」
母が青ざめ、私の太ももをテーブルのでぎゅっと掴んできた。 『美穂、やめなさい』という無言の鳴が伝わってくる。
だが、私は引きがらなかった。
「森川の式であると同に、私の式でもあります。私の仕事関係者や、これまで支えてくださった方々を蔑ろにするようなには、同できません」
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「気な……!」
正雄さんの顔がりで赤黒く染まっていく。 祖父は目を細め、まるで汚れた虫を見るような淡な目で私を値踏みしていた。
「千鶴」
祖父がく唸るように呼んだ。
「はい」
千鶴さんがび起きるように背筋を伸ばす。
「おは体、何を教えてきたんじゃ。嫁入りの娘に、の秩序ひとつ叩き込めんで、何が母親か」
千鶴さんは顔を蒼にし、唇を震わせながら々とをげた。
「……申し訳、ございません」
あのの指先が、テーブルクロスを千切れるほど握りしめているのが見えた。 理尽な暴力が、こうして、庭内で連鎖してきたのだ。
耐えきれなくなった。 私は直を見た。
この茶番を、自分の父親と祖父の横暴を、婚約者であるあのがどう止めるのか。 事務所であれだけ「俺がに入る」と豪語していた男が、どうするのか。
直と目がった。
直の瞳にあったのは、私への庇護でも、理尽へのりでもなかった。 骨な『恥をかかせるな』という拒絶だった。
直はをいた。
「美穂、今はそこまで言わなくていいだろ」
を疑った。
「親父や祖父の言う通りにしておけばいいんだよ。うちの顔をてるのが、そんなに難しいことか? 親戚や仕事関係のってものがあるだろ」
「……直?」
「美穂のりいなんて、さな事務所のばっかりじゃないか。
しが押したって、誰も文句言わないよ。してくれよ、今くらい」
喉の奥で、何かがプツンと音をてて千切れた。
さな事務所の。 私のの、必で積みげてきた仕事と脈を、この男は『親の顔』のためにあっさりと踏みにじったのだ。
「直さん、それはないでしょう」
震える声でをいたのは、私の母だった。
「美穂がどれだけ苦労して事務所を守ってきたか、あなたもごのはずです。それを、そんな言い方……」
「お母さん、を挟まないでいただきたい」
遮ったのは正雄さんだった。
「女親のつで育てられたからからんが、いささか分別のない娘さんだ。森川のに嫁ぐ以、週末は実へ戻り、祖父のの回りの世話をしながら、を学んでもらう。仕事にかまけて本分を忘れるようなら、そもそもこの縁談自体を考え直さねばならんな」
父親のその言葉に、直は反論するどころか、さく頷いてみせたのだ。
「美穂、聞いての通りだよ。父さんもこう言ってるんだから、仕事のスケジュールは調してくれよな」
部のの温度が、気に氷点までがった気がした。
胃の底から、たい吐き気がせりがってくる。 この男は、庇う気など最初からない。 権な父親と祖父の威を借りて、私を『言うことを聞く都のいい女』に作り替えようとしているだけだ。
「……本の打ちわせは、ここまでにさせてください」
私はちがった。 母のを取り、荷物を掴む。