みかん小説
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"私を笑った義母が、帰り際に「結婚しないで」と手紙を残した" 第1話

「若いだけが取り柄で、のことはなーんにもできない子なんですけどね」

広の空気が、瞬で凍りついた。 いや、凍りついたとじたのは私だけだったのかもしれない。

のの、親戚同が座になる座敷。 座に座る親戚の叔母が「まあ、らしいお嫁さん。直さんにはもったいないくらい」と目を細めた、その直だった。

をいたのは、隣に座っていた婚約者の母親——千鶴さんだった。

品に切り揃えられたボブヘアに、落ち着いた藤のアンサンブル。 その元には、穏やかで柔らかな笑みが貼りついていた。 冗談を言っているふうでも、照れ隠しでもない。 ただ、先の庭に咲いた雑を指差すような、あまりにも自然で平然とした声だった。

喉の奥が、カチリと音をてて乾いた。

「……あ、あの」

何か言わなければと唇をきかけた瞬、座からく濁った笑い声が響いた。

「わっはっは、そうかそうか。まあ、今の若い娘なんぞ皆そんなもんじゃろ」

歳になる祖父、源さんだった。 膝を叩いて満そうに顎を揺らす祖父にわせるように、親戚たちのからドッと笑いが広がっていく。

「千鶴さんも苦労するねえ」 「仕込みがいがあるってもんよ」

び交う言葉の端々に、悪の自覚すらない残酷さが透けて見えた。 私の胸の奥で、たい鉛の塊がドサリと落ちる。

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京都内でさな内装デザイン事務所をちげて。 暮らしの部で自炊も掃除も当たりにこなし、確定申告も現の職との折衝も、自分のでやってきた。 のことが何ひとつできない無能として扱われる覚えなんて、どこにもない。

助けを求めるように、隣の直を見た。

直は、線を畳に落としていた。 元に引きつった笑いを浮かべ、周囲の笑い声にさく相槌を打っている。

るでもなく、私を庇うでもなく。 ただ波が通り過ぎるのを待つように、背を丸めて笑いを浮かべていた。

指先から、スーッと血の気が引いていくのがわかった。

(……え、待って) (どうして、笑ってるの?)

付きってきた。 私の仕事の繁忙期にはスタジオまで温かいスープを届けてくれて、「美穂の自してるところ、本当に尊敬してる」と微笑んでいた直。 そのが今、親戚たちによる私の公処刑を、ただ黙って見過ごしている。

「ほら、美穂さん。いつまでも座ってないで、お茶のお代わりを淹れてきなさい」

千鶴さんがちがり、私の湯呑みを無造作に盆へ引き寄せた。

「あ、私がやります」

慌ててちがると、膝が微かに震えていた。 台所へ続くい廊は底えがして、ストッキング越しに古い板のたさが突き刺さる。

台所に入ると、千鶴さんはすでにきな鉄瓶をにかけていた。

伝おうと並んだ私の横顔を、あのは度も見ようとしなかった。

「お湯が沸いたら、祖父のと父の、それから親戚の男性陣から先にして。私たちの分は番最でいいから」

「……はい」

「急須の注ぎは、絶対に座に向けないようにね。常識だから」

淡々とした、抑揚のない指示。 さっき広で私を笑い者にしたことへの気まずさなど、微もじられない横顔だった。

昼の席でも、見えない境界線はどこまでも張り巡らされていた。 祖父が箸をつけるまで、誰も料理にを伸ばしてはいけない。 皿の刺や煮物は、祖父、直の父、直、親戚の伯父たちのへ優先して置かれ、千鶴さんと私の席には、めきった端境の鉢が押しやられた。

事の、直は祖父や父親の昔語りにひたすら頷き、「はい」「そうですね」とをげ続けていた。 いつも私ので見せていた、穏やかで理な表はどこにもない。 ただ位者に飼い慣らされた、従順な息子の顔だった。

事が終わると、男性陣は広に残って酒をみ始め、片付けはすべて女性の仕事になった。 のように積まれた皿。 油で汚れた皿を、たいで枚ずつ洗う。

湯器のスイッチを入れようとすると、千鶴さんが背から静かにを伸ばし、パチンと切った。

「油物はと古布で落としてから。

ガス代が無駄になるから、昔からここは洗いよ」

氷のようなが、指先の覚を奪っていく。

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