"私が外した保証人、身代わりは義母" 第1話
「業のキャッシュフロー、もう度引き直したの?」
私のその言で、座敷の空気が瞬で凍りついた。
皿の刺をつついていた夫の弘のが、ピタリと止まる。
「……また数字の話かよ」
く、苛ちを隠そうともしない声。
「たまには応援してくれてもいいだろ。母さんも楽しみにしてくれてるんだ」
義母の敏さんが、湯呑みを座卓にコトッと音をてて置き、私をたく見据えた。
「そうよ、佳奈さん。商売を始めるから縁起でもない。弘はちゃんと考えてやってるんだから、を差すようなこと言わないでおくれ」
名古内にある夫の実。 結婚して、この部で何度繰り返されてきた景だろう。
品メーカーの経営企画で、原価計算と予算管理を本業にしてきた私の指摘は、このではいつも「男のを邪魔する酷なし」として片づけられる。
「お義姉さん、弘さんはすごく頑張ってますよ。今は背を押してあげるなんじゃないですか?」
夫の斜め向かいに座る妹の由が、ふわりと柔らかい笑みを浮かべて言った。
、ホテルのイベント企画を辞めて職を探していた由を、夫の会社に紹介したのは私だった。 渉やPRが得だからと夫に頼まれ、姉としての善で引きわせた。
それなのに。
席をし、台所で数分の茶を注ぎ直していたのことだ。
広告
勝のすりガラス越し、暗い庭の隅につのが見えた。
夫と、由。
由の指先が、夫のシャツの襟元にそっと触れ、歪みをえていた。
ためらいのない、あまりにも自然で親密な指のき。
喉の奥が、カサリと乾いた。
……え、待って。
義理の兄と妹の距じゃない。
その夜の帰り、運転席の夫はを睨みつけたまま言った。
「由はいいよな。俺のやりたいことを、ちゃんと信じてくれる」
助席で、私は流れる灯をただ見つめていた。
「信じることと、の丈にわない負債を背負うことは別よ」
夫はで笑い、それ以をかなかった。
当、夫がすでに「別の誰かに背負わせる算段」を始めていたことなど、私はまだる由もなかった。
帰宅、夫が浴へ向かったのを見計らい、私はリビングのパソコンをいた。
活費を決済している族カードのWEB細。 私にも閲覧権限がある。
過ヶの履歴を遡る。
所のスーパー、ドラッグストア、ガソリンスタンド。 常の買い物のに、自然な決済が紛れ込んでいた。
同内のシティホテル。 曜の夜。回につき万千円。
帳をく。 「急なクライアント対応で遅くなる」と夫から連絡が入っていたと、完全に致していた。
度や度ではない。 に、回のペースで規則に刻まれた宿泊記録。
胸の奥が、たいで満たされていくようだった。
だが、これだけではまだりない。 言い逃れのできない決定な物証が必だった。
由のSNSアカウントをく。
半ほどから、投稿の雰囲気が変わっていた。 仕事の愚痴が消え、級ホテルのラウンジやバーの写真が並んでいる。
「切なと、秘密の打ちわせ」
そう添えられた、暗いバーの写真。 画面を指先でピンチアウトする。
カクテルグラスのすぐ隣。 理のカウンターのに、見慣れた濃紺の軸が転がっていた。
名入れの刻印。 夫の歳の誕に、私がデパートで選んだ特注の万だった。
背筋に、氷を押し当てられたような悪寒がる。
妹のために学費を面し、就職を助けし、夫の会社に居所を作ってやった。 その結果が、これか。
りで叫びす気力さえ起きなかった。 私は静かに画面の魚拓を取り、プリントアウトした。
翌週、私は弁護士事務所のドアを叩いた。
担当してくれた本直子先は、提した証拠の束に目を通し、淡々と言った。
「佳奈さん、よくにならずにここまで揃えられましたね。これなら言い逃れは能です」
「婚の続きをめてください。それと……もうつ確認したいことがあります」
夫がちげようとしている会社とレストラン事業。
そこに、私の名義や信用が勝に使われていないか。
調査を依頼したそのの夜、付が変わる直に帰宅した夫を迎えた。