みかん小説
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"初婚のはずの夫、新婚のベッドの奥に4年前の結婚写真" 第3話

いやあ、阪駅が混んでて参ったよ」

ネクタイを緩め、張帰りのキャリーケースを引いて入ってきた健太は、いつもの穏やかで非の打ちどころのない笑顔を浮かべていた。 には丸の袋が提げられている。私が好きな堂島ロールの箱が見えた。

「美咲? まだ起きてたのか。の朝いんじゃ……」

健太の言葉が途で途切れた。 リビングのペンダントライトの、私が腕を組んで微だにせず座っていることに気づいたからだ。 そして、その線はすぐに、テーブルの央に置かれた枚の写真へと落ちた。

部の空気が、瞬で氷点にまで凍りついた。

健太の顔から、すうっと血の気が引いていくのが目に見えてわかった。 靴を脱いだままの姿勢で、数秒、瞬きすらしない。 喉仏がごくりときくした。

「……何、これ」 健太の声は、驚くほどかすれていた。

「今、寝のベッドのを業者に清掃してもらったの」 私はできる限り、を交えずに平坦な声をした。声を荒げれば、相に主導権を握られる。仕事で修羅をくぐってきた私の本能が、そう警告していた。 「底板の奥に、古い箱が挟まってた。あなたのタキシード姿、すごく似ってるわね」

健太は引きつった笑みを浮かべ、わざとらしく眉をげて歩み寄ってきた。 「あ、ああ……それか。びっくりした。

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どこからてきたのかとったら……これ、学のサークルの先輩の余興だよ。ほら、寸劇で郎役をやらされたって、に話したことなかったっけ? 懐かしいな、まだ残ってたんだ」

信じられない。 指先ひとつ震わせず、この男は今、完全に即興の嘘をついた。

「へえ。サークルの余興を、世田区代沢のこの部でやったんだ?」 私は写真を裏返し、青い印字の所を指先でトントンと叩いた。 「の。婦の名は、澤真由さん。結婚指輪の裏に刻印があったわ。『2022.4.18 K to M』って」

健太のが半きのまま止まった。 泳ぐ線が、私の目、写真、そしてへと激しく彷徨う。 嘘の逃げが完全に塞がれたことを悟った瞬、男の表がガラリと変わった。

さっきまでの取り繕った笑顔が消え、今度は痛ましいほどに眉根を寄せ、両で顔を覆った。

「……ごめん」 指の隙から漏れたのは、湿り気を帯びた、今にも泣きしそうな声だった。 「美咲を騙すつもりはなかったんだ。本当に……ただ、怖かったんだよ」

健太は私のの子に力なく崩れ落ち、すがるようにを乗りしてきた。

「度だけ、結婚してた。でも、たったので破綻したんだ。価値観がまるでわなくて、毎が獄だった。すぐに婚届をして、過は全部清算した。美咲に会ったとき、僕のはやり直せるって本気でったんだよ。

もしバツイチだって言ったら、美咲は僕を選んでくれないんじゃないかって……失うのが怖くて、言いせなかった」

ポロポロと目から涙をこぼし、健太は私のを握ろうとしてきた。 私はそのを、自然な作で膝のへと引いてかわした。

初婚だと偽っていたことへの言い訳は、予の範囲内だった。 男が自分のプライドを守るために吐く、ありふれた保のセリフだ。 だが、私の胸の奥で渦巻いている本質な疑問は、そこではない。

「過に結婚していたことはわかったわ。じゃあ、この部は何?」 私の問いに、健太の涙がピタリと止まった。

「この部って……何が?」 「あなた、独代に自分で買ったって言ってたよね。でも、写真の裏に彼女の字で『やっと私のができた』っていてあった。このマンション、本当にあなたのものなの?」

健太の目が、瞬だけ鋭く細くなった。 先ほどまでの々しい被害者の顔は消え、仕事で見せる徹な交渉の目つきが戻っていた。

「何を言いすかとえば……当たりだろ。この部は俺の名義だ」 健太は迷いのない、い調で言い切った。

「彼女はもしていない。ただ緒にんでいただけだ。『私の』なんていたのは、あいつが勝に浮かれていがってただけだよ。婚するときも、財産分与で揉める筋いは切なかったから、あいつがてって終わりだ」

「じゃあ、登記事項証を見せて」 私が即座に返すと、健太は呆れたようにさく息を吐いた。

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