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"顔合わせの個室で、相手の母親は私の過去に怯えていた" 第9話

だからこそ――。 『未婚の母』 『父親の素性が』 『柄が釣りわない』

世という名の分い壁を盾にして、私と梨を徹底に見し、プライドを々に踏みにじることで、向こうからを引かせようとしたのだ。

「……汚い」

声が震えた。 りで、指先がくなるほど机の縁を握りしめていた。

私が代の若さで未婚の母となり、今まできてきた。 のものも、をした梨を背負って病院へり、眠を削って帳簿のと向きってきた。 世の好奇の目や、ないに晒されながらも、娘にだけは貧しさをじさせまいと必で紡いできた私の。

それを、あの女は。 自分の私利私欲と保のために、靴で踏みにじろうとしたのだ。

許せない。 全の血液が、く沸騰していくようだった。

その、元のスマートフォンがく振した。 画面に表示されたのは、梨からのメッセージだった。

『お母さん、今直さんから連絡があった。……お母様が、親戚に話をかけ始めているらしい』

画面をスクロールする親指が、微かに張る。

『「息子の相は、どこの誰とも分からない男に産ませた娘だ」「黒田の恥になる」って、親戚のおじさんたちに泣きついて、結婚を止させようとしてる。直さん、今から実へ乗り込んで話をつけるって言ってるけど……声がひどく震えてた』

胸の奥が、たく研ぎ澄まされていく。

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玲子は、もう戻りのできないところまで追い詰められているのだ。 親戚を巻き込んで既成事実を作り、堀から私たちを埋めてようとしている。

私はちがり、コートを羽織った。 傘をに取り、事務所の鍵を閉める。 夜の横浜のは、たいに煙っていた。

同じ頃、横浜青葉区の閑静な宅にある黒田本宅では、激しい声が響いていた。

なオーク材の玄関ドアをけ、直がリビングへ踏み込んだ瞬、玲子の甲い声がを劈いた。

「ええ、ええ、そうなのよ叔父様! 私だって驚きましたわ。検事さんだなんて派な肩きを振りかざしているけれど、蓋をけてみたら父親の名すら言えないような庭なんですもの。直も騙されているのよ!」

リビングのソファに腰掛け、固定話の受話器を握りしめる玲子の背。 その元には、広げられた親族の連絡網とメモ帳が散らばっていた。

「母さん! いい加減にしろ!」

直が革靴のままがり込むような勢いで、受話器を引ったくった。

『もしもし? 直か? 体どういうことなんだ、おの結婚相は――』

「叔父さん、母の言っていることは全部デタラメです。で僕からかけ直しますから!」

通話を方に切り、直は肩で息をしながら母親を見ろした。 普段は穏やかで、争い事を避けてきた息子の瞳に、かつてない激しいりの炎が宿っていた。

「何をしているんだ! 親戚にデマを言いふらして、梨さんと青さんをどれだけ傷つければ気が済むんだよ!」

「デマですって!?」

玲子はちがり、キーキーと切り声をげた。 その表は、いつもの品な閑マダムのものとは程く、形相が歪んでいる。

「事実じゃないの! 父親が誰かも言えない女を、この黒田の男の嫁として迎え入れられるわけがないでしょう! あなた、弁護士のくせに世体がどれほど切か分からないの!? 親類縁者にわせる顔がないわ!」

「世体、世体って……! 梨さんは自分の力で勉して、司法試験に受かって、今派に仕事をしているんだ! 青さんだって、ひとりで梨さんを派に育てげた素らしいお母さんだ! 父親がいないことが、そんなに罪なことなのか!?」

「罪よ!」

玲子はテーブルをバン、と叩いた。

「父親の素性もかせないような怪しいが、まともなはずがないでしょう! どんな血が流れているかも分からないのよ!」

「母さん!」

「それにね!」

息を荒らげ、血った目で息子を睨みつける玲子のから、引き止めようのない言葉が滑り落ちた。

「昔から、のの懐を嗅ぎ回って、余計なことばかりほじくり返すようなは碌なものじゃないのよ! あの女の目を見たでしょう!? のみを握って脅しをかけるような、底の悪い目をして……! あんな女と親戚になったら、このがめちゃくちゃにされるわ!」

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