"顔合わせの個室で、相手の母親は私の過去に怯えていた" 第7話
と聞かされた。 私は作成途のきと突データをすべて引き渡し、業務を終した。 以、その会社の名をいすこともなかった。
だが、私の目は、その業務終確認の最段に釘付けになった。
そこには、コンサルティング料の振込先として指定されていた個企業の名と、代表者名が記載されていたのだ。
『振込先:同会社宮本企画』 『代表:宮本隆』
宮本。
ので、鳴が轟いたような衝撃がった。
直さんが以、何気なく話していた言葉が、の奥で鮮に再される。 ――『母の旧姓は宮本っていうんです。母の実は昔から商売をやっていて、今も母の弟がさなコンサルティング会社をやってるんですよ』
宮本隆。 黒田玲子の、実の弟。
背の毛穴という毛穴から、や汗が噴きした。
自然にい仕入れ。 実態のないコンサルティング料。 社夫である玲子の実弟の会社へと流れていた、数千万円の会社の資。
そして、その正の尻尾を掴みかけ、証拠の示を求めて業務を制終させられたのが――この私、青里美だった。
「……そういうこと、だったのね」
私はわず、乾いた声をもらした。
玲子は、直から結婚相の母親の名を聞いた瞬、気が狂うほどの恐怖に襲われたのだ。 、弟と結託して会社のを抜いていた現を嗅ぎつけ、あと歩で社内監査のに引きずりしかけた、あの忌まわしい記帳係。
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その女が、息子の母親として、親戚として、再び夫のに姿を現そうとしている。
もし夫と親戚になり、族ぐるみの付きいが始まれば。 もし何かの拍子に、のあの未完の帳簿の話が夫のに入れば。 自分が弟とともに夫の会社をい物にしていた事実が、のに晒されてしまう。
だから、玲子は何としてもこの結婚を破談にしなければならなかったのだ。 夫に本当の理由をられるわけにはいかない。 だからこそ、「未婚の母」「父親の素性」「柄が釣りわない」という、もっともらしい世体の刃を振り回し、私と梨を徹底に侮辱して、向こうからを引かせようとした。
父親が誰かなんて、最初からどうでもよかったのだ。 この女は、自分の罪と保のために、私の29のを、娘の誇りを、で踏みにじろうとしているのだ。
類を握りしめる私の指先が、りでわなわなと震えた。
「絶対に……許さない」
私はバインダーを閉じ、胸にく抱きしめた。 侮辱に耐えてをげる気など、最初から毛なかった。 けれど今、私ののでくすぶっていた戸惑いは、氷のようにたく澄み切った決へと変わっていた。
私には、守るべきものがある。 29、ろ指を指されながらも、清廉潔に育てげてきた娘の尊厳だ。
そして――。 数字を誤魔化し、のを踏み躙ることでしか自分を守れないようなに、この私が屈することなど、絶対にあり得ない。
私はオフィスのかりを消し、静かに鍵をかけた。 対決のとなる、あの料亭の予約まで、あとわずか数だった。
事務所の窓を打つ夜の音が、くでく響いていた。
デスクのに広げたの業務誌から、線がせない。 古びたの匂い。 蛍灯のいので、私が殴りきした赤いボールペンのインクだけが、まるで昨のことのように鮮に浮かびがっていた。
『同会社宮本企画』 『代表:宮本隆』
指先が、え切っていく。
のあのの景が、が底から湧きがるように脳裏に蘇る。
当、私は関内の提携先である会計事務所から、応援の請を受けていた。 「黒田メディカル・システムズ」という医療器販売会社が、数ぶりの税務調査を控えているため、過期分の帳簿と証憑の突きわせを伝ってほしいという依頼だった。
私は元請け事務所の角に用された作業机で、何冊ものバインダーと格闘していた。 元帳の数字と、領収、請求、の振込受取を枚ずつ照していくな作業。
そこで、最初の違に突き当たった。
特定のカテーテルや体モニター用の消耗品。 仕入れ先として記載されている会社からの納品価格が、同業社の相と比べてらかにかった。