"私を大学へ通わせた義母と、二十年前の750万円" 第16話
つまり、当利得や詐欺な勧誘の余を残しつつ、相方からの当な銭求を完全に遮断するための力な盾にはなります。帳簿の処理としても、貸倒れとして理し、税務・法務の双方で完全に区切りをつけるのが現実でしょう」
「わかりました。それでお願いします」
委任状に署名と捺印を済ませ、い樫ののドアを閉めた。
これで、終わったのだ。 あの男がき父の名を騙り、母の罪悪を貪る々は、法という徹な境界線によって永久に断ち切られた。
だが、研究のデスクに戻り、革の子にくを沈めた、胸のに残ったのは勝利の歓ではなかった。 ずっしりとした、底れぬ空虚さだった。
机のには、数に産業者から受け取った物件資料のファイルが置かれていた。 枚方駅く、築浅の古マンション。 完備、オートロック、防犯カメラ付き、諸費用込みで約2,000万円。
私はそのパンフレットの表を、指先で静かに撫でた。
……私は、何をやろうとしていたのだろう。
2,000万円を貯め、綺麗なマンションを括で買い、母に「はい、プレゼント」と鍵を渡す。 そうすれば、母が私に注いでくれたの犠牲を精算できると本気で信じていた。 「私はもうのになり、あなたにを買ってあげられるほど成功しました」
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と、親孝の皮をかぶった傲な免罪符を買い取ろうとしていただけではないのか。
母の気持ちを、度でも確かめただろうか。 あのが本当に欲しかったのは、最設備の揃った見らぬの級マンションだったのか。
私はゴミ箱を引き寄せ、机ののパンフレットを迷わずそこへ滑り込ませた。
から施すような恩返しなど、ゴミ箱きでいい。 あのが守り続けてきた自尊を、これ以私の勝な罪滅ぼしで踏み躙るわけにはいかなかった。
その週の曜、私は再び枚方のアパートを訪れた。
階段をがる取りは、先週とはまるで違っていた。 踊りにち、チャイムを鳴らす。 ドアの向こうで鍵がれる音がして、顔をした母は、しだけ照れくさそうに笑った。
「……いらっしゃい。ちょうど、お昼のお素麺を茹でようとってたところよ」
部のは、先週の嵐が嘘のように静まり返っていた。 畳の青畳の匂いと、微かなめんつゆのり。 茶ぶ台のには、氷でやされた素麺と、刻んだ青蘇と姜が綺麗に皿に盛られていた。
「あのから、何かあった?」
素麺をすすりながら、努めて平淡な声で尋ねた。
「ううん。何もないわ。……弁護士の先から、の控えが届いたの。難しい法律の言葉がたくさん並んでて、私にはよく分からなかったけど。
でも、もう度とうちには来ないって、それだけは分かったわ」
母は箸を止め、窓のの青空をぼんやりと見つめた。
「よ。正雄さんがくなってから、ずっとのどこかで怯えてた。またあのが鳴り込んでくるんじゃないか、正雄さんの会社を潰したのはおたちのせいだって親戚に言いふらされるんじゃないかって。……それが、切れ枚で終わっちゃうのね」
「切れ枚じゃないよ。お母さんが、あの夜ドアをけて自分のでち向かったからだよ」
私がそう言うと、母は恥ずかしそうにを向き、さく吹きした。
「みっともないところを見せちゃったわね。私、歳甲斐もなく鳴り散らしちゃって」
「ううん。すごく誇らしかった」
事を終え、器を片付けた、私はバッグから枚のルーズリーフを取りした。 産のパンフレットではない。 私が自分のでき留めた、いくつかの条件のメモだった。
「お母さん。を探そう」
母のが、布巾を持ったまま止まった。 その顔に、微かな警戒のが戻る。
「……彩子。にも言ったでしょう。なんていらないわよ。私はここで分だし、あなたにおをしてもらう筋いなんて……」
「最まで聞いて」
私はメモを茶ぶ台のに広げた。
「恩返しで買うわけじゃない。お母さんの過の苦労を買い取るつもりも、もうない。
……ただ、私がしたいの」
「あなたが?」
「そう。膝を痛めて、い買い物の袋を提げて、この急な階段を登りりするお母さんを、私はもう見ていられない。