"私を大学へ通わせた義母と、二十年前の750万円" 第14話
「関係ねえだと!? 貴様、誰のおかげで学の先になれたとってんだ!」
叔父は廊に響き渡る声で鳴り散らした。 階の部の窓がバタバタと閉まる音がする。
「兄貴がんだあと、俺が会社を畳まずにをすすっての簾を守ってやったからだろうが! 会社があったから、おも世から『倒産したの娘』ってろ指を指されずに済んだんだ! おがここまで来られたのは、全部俺のおかげなんだよ!」
恩を掠め取る。 の犠牲のに胡をかき、それを自分の柄にすり替える。 、母にしたことと寸分違わない。
「叔父さん、嘘をつくのはやめてください」
私はスマートフォンの録音画面を識しながら、酷な声で告げた。
「父がくなった、会社に借なんてありませんでした。穴をけたのは、叔父さんが独断でめた型空調のリース事業です。直美さんから、当のメモと帳簿の記録をすべて確認しました」
男のきが、瞬で止まった。 ドアを掴んでいた指先が、ピクリと痙攣する。
「……な、直美……? あいつ、何を……」
「叔父さんは、父のを利用して母を脅し、実の売却代から百万を騙し取った。そして、度も返済していない。そうですね?」
「ち、違う! あれは兄貴の……兄貴が残した……!」
「いいえ。契約の借主は会社であり、代表取締役はあなたです。
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父の個な債務ではありません。あなたは自分の失敗を隠すために、夫をくしたばかりの母を騙したんです」
「黙れ! 黙れ黙れ黙れ!」
叔父は正気を失ったように叫び、ドアチェーンを両で掴んで激しく揺さぶった。
「証拠でもあるのか! の類なんぞ、とっくに効だ! 法律、俺には円も返す義務はねえんだよ! 幸子だって納得して判を押したんだ! がを挟むな!」
効。 この男のから、ついにその言葉がた。
借のを認めたのだ。 返済していない事実を、自ら状したのだ。
私がポケットののスマートフォンの止ボタンを押そうとした、そのだった。
「――どいて、彩子」
背から、く、静かな声がした。
振り返ると、そこに母がっていた。 先ほどまで涙を流し、私の腕にすがりついて震えていた母ではなかった。 エプロンをし、背筋をまっすぐに伸ばし、その瞳には凍りつくようなが宿っていた。
「お母さん……?」
母は私の横を通り抜け、躊躇うことなくを伸ばすと、ドアチェーンをした。
ガチャリ、とい属音が響く。
「おい、幸子……」
ドアがきく側へとかれた。
夜が、母の髪混じりの髪をわずかに揺らす。 狭い廊の蛍灯の、母は歩へ踏みし、酔した義弟の目を、真正面から見据えた。
その姿には、の怯えも、卑屈さも、微も残っていなかった。
「……隆志さん」
母の声は、鳴り声ではなかった。 だが、夜の静けさのに、驚くほどく、く響き渡った。
「私が何もらなかったことには、しないでください」
男が、たじろいだ。 巨体を揺らし、半歩ずさりする。
「な、何を……」
「あのおを貸したこと自体を、私は悔していません。あの、あなたを警察に突きさなかったことも、裁判を起こさなかったことも、すべて私が自分で決めたことです。正雄さんの名誉を守り、彩子を学にかせるために、私が選んだです」
母は歩、また歩と、男に詰め寄った。 柄な母のが、蛍灯のを背負って、巨な男を威圧するように伸びていく。
「でもね。あなたが兄貴のために会社を守っただなんて、そんな嘘を私ので度とにしないで。あなたが守ったのは、自分の保だけでしょう」
「さ、幸子さん、お、何を言って……」
「正雄さんの名を、おを請る具に使わないでちょうだい!」
母の言葉の刃が、男の喉元を正確に切り裂いた。 叔父は言葉を失い、喉をゴロゴロと鳴らしながら、ただ目を見いてち尽くしていた。
私は母の隣に並びち、バッグから枚の類を取りした。
「隆志さん」
私は学の法学部顧問弁護士から取り付けてきた、相談記録の控えを男の目のに突きつけた。
「の銭消費貸借契約については、消滅効の主張があるとしても、今回の度なる夜の押しかけ、暴言、脅迫為、および当な銭求については、威力業務妨害および恐未遂として直ちに所轄の枚方警察署に被害届を提します。