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"私を大学へ通わせた義母と、二十年前の750万円" 第10話

「正雄さんが倒れられるから、隆志さんはの商業施設向けの型空調リース事業にをそうとしていました。ハイリスクで、うちのようなさな会社が背負える規模の投資じゃなかった。正雄さんは『絶対にをすな、会社が吹きぶ』と、毎のように事務所で隆志さんと鳴りいの喧嘩をしていました」

直美さんはカップを置き、私の目をまっすぐに見つめた。

「でも、正雄さんが急された。ブレーキ役がいなくなった隆志さんは、正雄さんの葬儀が終わるや否や、独断でそのリース契約をしたんです。そして……わずかヶで相企業が倒産し、数千万円の焦げ付きが発しました」

「数千万円……」

「ええ。取引先への形の決済期が迫り、あと数で設備管理は渡りをして倒産するところでした。正雄さんが遺した借などではありません。すべて、隆志さんが自分の見通しの甘さで作った、ただの自爆です」

の奥で、ドクドクと激しい血の音が鳴り響いていた。

叔父の言葉が、脳内でリフレインする。 『兄貴の残した会社を潰しちゃいけないって、自分から協力してくれたんだ』 『俺が会社を畳まずに踏ん張って、の板を守ったからだ』

全部、嘘だった。 父の遺した負債などではなかった。 叔父が自分の愚かな暴でけた巨な穴を埋めるために、父のを利用したのだ。

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「隆志さんは、途方に暮れていた幸子さんのところへ乗り込みました」

直美さんの声が、静かなりを帯びてくなった。

「『兄貴が作った借だ』『このままじゃ会社が潰れて、正雄さんは詐欺師同然の扱いで世に晒される』『親戚にも顔向けができなくなる』……そうやって幸子さんを精神に追い詰めたんです。幸子さんは、正雄さんの名誉を守りたいで、ご両親が遺してくれたを売る契約を結ばされたんですよ」

喉の奥が引きつり、呼吸がうまく吸い込めなかった。

母は、夫をくしたばかりの、番っていた期に。 実の親の形見であるを売り払い、その代を、夫を裏切り会社を破滅させかけた男のポケットに突っ込まされたのだ。

「私は当、幸子さんに本当のことを話そうとしました」

直美さんが伏し目がちに言った。

「でも、隆志さんに気付かれて、ひどく脅されました。『余計なことを言ったら、横領の疑いで警察に突きすぞ』と。私は怖くなって、そのの暮れに会社を辞めました……。幸子さんを守れなかったこと、ずっと、ずっと胸のトゲになっていました」

直美さんは私のを、両でそっと包み込んだ。 そのの温もりが、震える私の指先に伝わってくる。

「彩子ちゃん。幸子さんは悪くありません。でも、あのの説が真実だったなんてことは、がひっくり返っても絶対にあり得ない」

テーブルのの契約を、私は見つめた。

『設備管理株式会社 代表取締役:隆志』

このの裏に隠されていたのは、美談などではなかった。 自己保のために未を騙し、き兄の名を汚し、のの拠り所を奪した、卑劣な略奪の記録だった。

そして母は、その嘘を「の証」だと信じ込まされ、、暗いアパートで膝の痛みに耐えながら、息を潜めてきてきたのだ。

胃の底から、煮えたぎるようなりがせりがってくるのを、私は止めることができなかった。

王寺の古びた喫茶をたも、指先の震えは止まらなかった。

初のぬるいがアスファルトのを巻きげ、喉の奥をからからに乾かしていく。 バッグのには、森直美さんから預かった当のメモの束が入っていた。 正雄さんが反対していた商業施設の事名義。 叔父が独断で通した形の期。 そして、母の百万円が会社のどの座に入り、どの焦げ付きの補填に消えたのかを示す、几帳面な鉛きの記録。

「……お父さん」

雑踏の真んで、私は唇を噛み締めた。

私の父・正雄は、会社を潰しかけて逃げした無責任な経営者などではなかった。 むしろ、弟の暴を必で止めようとし、最まで族と会社の信用を守ろうとして力尽きたのだ。 そのの直、しみに暮れる母を脅し、父の名誉を質にして実の売却代を巻きげたのが、隆志という男の正体だった。

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