"恩人の葬儀の裏で、夫は私の実家に値段をつけていた" 第10話
私は暗のにち尽くし、え切った自分の指先を見つめていた。
。 私はずっと、「夫に申し訳ない」とい続けてきてきた。 親のいない私を嫁にしてくれたこと。 実に仕送りを続ける私を、骨に止めはしなかったこと。
だから、修が価なを買い替えても、ブランドの計をコレクションしても、何も言わなかった。 「私が実に負担をかけているのだから、夫の贅沢を責める資格はない」と、自分を納得させてきた。
でも、違った。 あのは「許して」いたのではない。 いつか訪れる清算のに向けて、私に負い目を植え付け、飼い慣らしていただけだったのだ。
翌朝、修がまだい鼾をかいて眠っているうちに、私はをた。
朝番の幹線に乗り、再び崎へ向かった。
のたい朝が、浅の麓をく覆っている。 崎駅からタクシーに乗り、藤本薬のでりた。
胸ポケットから、昨持ち帰った真鍮の鍵を取りす。 シリンダーに差し込み、回す。 カチャリというさな音が、静寂のに響いた。
「……お兄ちゃん」
にを踏み入れると、昨と同じ、薬と古いの匂いが私を包み込んだ。 誰にも汚されていない、静謐な。
私はまっすぐに、奥の居スペースへ向かった。 階へがる階段のにある、さな押し入れ。 そこには、の義姉が切にしていた桐の箱が収められているはずだった。
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埃を払いながら襖をけ、奥からい桐箱を引きす。 蓋をけると、には母の形見の着物と、兄夫婦の古い結婚アルバム。 そしてその底に、茶いクラフトで包まれた、分い束があった。
紐を解くと、からてきたのは――数冊に及ぶ、擦り切れた学ノートだった。
表には、義姉の幸恵さんの、丸くて丁寧な文字。 『藤本 計記録』 昭の終わりから、までの号が、冊ごとに几帳面にき込まれていた。
番しい、のノートをめくった。
ページをいた瞬、私の目はあるに釘付けになった。
見きの央に、赤いペンで縦の線が引かれ、独した項目が作られていたのだ。
『真理子からの預かり』
ページをめくる。 そののも。 そののも。
、、――。 私が毎、千葉のから群馬の座へ振り込んでいた額が、付とともに円単位で記録されていた。
『 真理子より 100,000円』 『 真理子より 100,000円』
そして、その横には、義姉の細い文字で、使途が細かくメモされていた。
『彦の入院費補填:35,000円』 『根瓦修繕積:20,000円』 『残額:45,000円 専用座へ入』
……専用座?
臓が、鐘を打ち始めた。 震えるでノートの最のページをめくると、のポケットに、冊の古い方の通帳が挟み込まれていた。
名義は――『藤本幸恵』。
だが、そのに鉛で、さくこうき添えられていた。
『真理子のための預』
通帳をく。 定期預の欄に印字された数字の列が、目にび込んできた。
毎、数万円ずつ。 兄が倒れて医療費がかさんだ期や、舗の改装をしたを除き、私が送ったおの半分以が、にわたって度も引きされることなく、ただひたすらに積みてられていた。
最終残――千百万円。
「……え?」
息ができなかった。 目のの数字が歪んで、焦点がわない。
どうして? どうして、このおを使わなかったの?
私は、の活のしにしてほしくて、送っていたのに。 あの苦しかった代、私を医学部に入れてくれた恩を、しでも返したくて振り込んでいたのに。
通帳のに、つ折りにされた枚の便箋が挟まっていた。 義姉の幸恵さんの跡だった。 インクがし滲んでいる。
『真理子ちゃんへ』
静まり返った部に、カサリとの擦れる音が落ちた。
『このノートをあなたが読んでいるということは、きっと私とお兄さんは、もうあなたの傍にはいないのだといます。
勝なことをしてごめんなさいね。 あなたが毎、懸命働いたお料から仕送りをしてくれていること、本当に謝していました。お兄さんの病気のは、本当に助けられました。
でもね、真理子ちゃん。
お兄さんと私には、どうしても使えないおでした。