"恩人の葬儀の裏で、夫は私の実家に値段をつけていた" 第8話
震えが止まらない。 しみじゃない。 これは、信じてきた「族」という名の怪物の正体を、のもとに晒されたことへの、激しい嫌悪とりだった。
あいつは、最初からこのを狙っていたのだ。 兄が倒れた、見いにも来ずにの坪数を聞いてきたあの。 義姉がで暮らしていた、「古いなんて維持するだけの無駄だ」と吐き捨てたあの。
すべては、自分の贅沢な老のため。 私の医師としての収入で活費を賄わせ、実への支援を「無駄」と罵り、最にはそのを売り払って、自分の見栄を満たす級マンションのにする。
私のを、私の族を、あいつは体何だとっているのか。
私はそので、群馬の古いをにした。 真鍮の鍵で玄関を施錠する、今朝とはまったく違う決が胸の底で固まっていた。 この鍵を、絶対にあの男のに渡してはならない。
千葉の自宅に戻ったのは、夕方の過ぎだった。 修が帰宅するまで、まだはある。
私は靴を脱ぐと、度もち入ったことのない夫の斎へ向かった。
普段は「仕事の密類があるから」と鍵をかけられている部だが、今は用にも、ドアノブが半きになっていた。 朝、急いで社したせいで閉め忘れたのだろう。
デスクのには、ノートパソコンと、宅設備関連の業界誌。
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そして、元のキャビネットの最段の引きしを引くと、あっけないほど簡単に、そのファイルは見つかった。
黒いバインダーに、テプラで『老資産計画・み替え資料』と貼られている。
ページをめくると、修の几帳面で勝なきの資計画表が挟まっていた。
『グランド・レジデンス幕張ベイ 最階角部』 物件価格:千百万円。 諸経費・オプション費用:約百万円。 総所資:約千百万円。
その段、資調達のシミュレーションの欄に、太い赤ペンでかれた内訳があった。
・修退職見込み(定):千万円 ・佐伯共通預(真理子座からのプール分):千百万円 ・修個預:百万円 ・幕張物件提携シニアローン借入:千百万円
そして、その分を埋めるように、独したがき加えられていた。
『★群馬崎実売却益(真理子相続分):千百万円(全額充当)』
用の余には、修のりきが並んでいた。 『真理子の説得は事承諾で。医者のプライドを刺激せず、「ののため」と押し切る』 『実の解体は相見積もりを取らせず、ナカジマ建設(同期のコネ)へ発注。キックバック百万確保』
を持つ指先が、くなるほど張った。
全の毛穴から、や汗が吹きす。 事承諾で。 キックバック百万確保。
、同じベッドで眠り、朝を共にし、「ってらっしゃい」と送りしてきた男の正体が、ここにあった。
この計画表にかれた千百万の「共通預」すら、半は私の当直当や勤先からの報酬を、夫に言われるがまま預けていた座のものだ。 「俺の方が資産運用に詳しいから」「宅ローンの控除枠を使い切るためだから」と体よく言いくるめられ、私は疑うことすらしなかった。
あのは、私の労働も、私のも、兄夫婦が命を削って遺してくれたものも、すべて自分の見栄と欲望の燃料として消費するつもりだったのだ。
その、玄関のドアがガチャリとく音が響いた。
革靴が脱ぎ捨てられる音。 カバンがに置かれるい音。
「おい、真理子。いるのか?」
嫌そうに喉を鳴らす、聞き慣れた夫の声。
私は静かに息を吸い込み、デスクのの資計画表と、崎から持ち帰った『エステート』の査定をに取った。
そして、斎をて、廊の照をカチリと点けた。
暗い玄関でネクタイを緩めていた修が、私を見て怪訝そうに眉を寄せた。
「なんだよ、気も点けないで。飯は? 今、でうって言ってなかったよな」
私は言も発せず、に持っていた枚の類を、玄関のシューズボックスのに音をてて叩きつけた。
バサリ、と乾いた音が静かな廊に響き渡る。
修の線が、落ちたの文字へと吸い寄せられた。