"姉の身代わりで謝罪したら「最初からあなたをご指名です」" 第22話
像通りの惨状だった。 父の薬の管理も、複雑な川越のゴミの分別も、すべて私が、文句も言わずにでこなしていたことだった。
「お母さん、分別カレンダーは蔵庫の横に貼ってあるでしょ」
『あんな細かい字、老で見えるわけないでしょうが! それに綾よ! あの子、賃も入れないくせに『部が汚い』『洗濯物の畳み方が雑だ』ってお母さんに文句ばっかり言って! 夕飯作れって言ったら『私は疲れてるの!』ってドアを蹴っばすのよ! どうにかしなさいよ、あんた妹でしょう!?』
話の向こうから、ガシャーンと何かが割れる鈍い音と、姉の「うるさいババア!」という切り声が微かに響いてきた。
かつて私を共通の「雑用係」にすることで保たれていた、いびつな庭の平。 底が抜けたバケツのように、溜め込まれていた満と勝さが、互いにを剥いてぶつかりっているのだ。
れだとはった。 けれど、胸の奥に湧きがってきたのは、どこまでも徹なだった。
「お母さん」
『何よ! く帰ってきて、部を片付けなさいよ!』
「域の包括支援センターに相談してみて。齢者の活支援の窓があるから。それから、お姉ちゃんには自分でアパートを借りるように言って」
『な……何言ってんのよ! に頼めるわけないでしょう、世体があるのよ!』
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「世体を気にしてるのは、お母さんたちだけでしょ。私はもう、あののじゃないから」
『奈緒! ちょっと待ちなさいよ、奈緒ッ――』
私は親指で通話終の赤いアイコンをタップした。 そして、そのまま母の番号と、父、姉の番号を着信拒否に設定した。
元のスマートフォンが、静まり返る。 オフィスので吸い込んだの空気は、澄み切ってどこまでも甘やかだった。
のの尻拭いをやめること。 それは決して残酷なことではない。 が、自分たちの選んできた結果を引き受けるという、当たりの現実にち返っただけなのだから。
印刷会社での仕事は、以にも増して充実していた。
定で退社したは、誰に急かされることもなく、駅のでデザインの本をち読みしたり、スーパーで自分のべたいものだけをカゴに入れたりした。 週末には、祖母の形見の糸切り鋏を使い、曇野の果園をい浮かべながら、さなランチョンマットを縫った。
松本さんとは、に度、いLINEを交わしていた。 野の葉のみ具や、商品の試作の難しさ。 私も川越ので見つけた素敵な袋の写真を送ったり、しく導入された印刷の癖について語ったりした。
に度、松本さんが都内の商談に来る際には、川越までを伸ばしてくれた。
私たちは駅のさな喫茶や、蔵造りの並みにある蕎麦で昼を共にした。 をつなぐことも、甘いの言葉を囁きうこともない。 ただ、お互いの仕事の苦労を笑いい、これからの暮らしについて語りうは、どんな贅沢なディナーよりも私のをく満たしてくれた。
そして、が過ぎ、桜の季節が巡り――初の陽射しが川越の畳を照らし始めた頃。
私のワンルームの郵便受けに、みのあるレターパックが届いた。
差は、『松本果実芸 代表取締役 松本悠真』。
部に入り、ハサミで丁寧に封を切ると、からてきたのは冊の分いファイルと、見慣れない細の箱だった。
箱をけると、には息を呑むほど美しい、しいジャムのパッケージが収められていた。
私が以、曇野の作業で指摘した通り、芯材には無駄なを使わず、軽量で度のいE段ボールが緻密に組みわされていた。 表面のテクスチャーは、素朴でありながら指先にしっとりと吸い付くようない。 そして箱を留めるスリーブには、野県産の楮を使ったに、みのあるで、あのさなツバメのマークが控えめに箔押しされていた。
角の潰れは切ない。 蓋をけると、ジャムのガラス瓶が完璧な角度で固定され、まるで宝のようにを反射していた。
「……あ」
わず声が漏れた。 私が現の経験からにした言葉が、何百回もの試作を経て、完璧な形になってそこにあった。