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"姉の身代わりで謝罪したら「最初からあなたをご指名です」" 第21話

眉も描いていないその顔には、いつもの取り澄ました余裕など微もなく、ただただ目のの景を信じられないといった様子で元を押さえている。

私は綾と目がった。 姉は何かを言おうとしてをパクパクとかしたが、松本さんの徹な線に射すくめられ、結局言も声をせなかった。

私は姉に向かって、くをげた。

「お姉ちゃん。今まで私のやを勝に使ってくれて、ありがとうね。もう度と貸さないから」

姉の顔が、屈辱で真っ赤に染まった。

「こう、松本さん」

私がそう言うと、松本さんは柔らかく頷き、私のから古いボストンバッグを自然な作で受け取ってくれた。 決して袈裟に守るような仕ではなく、い荷物を持つ者への、ごく当たりの配慮として。

「失礼いたします」

松本さんが礼し、私たちは実の玄関をた。

ガラガラ、ピシャリ。

背で閉まった引き戸の音は、驚くほど軽かった。 、私を閉じ込めていた頑丈な檻の扉は、鍵をけてにてしまえば、ただのっぺらいとガラスの板に過ぎなかったのだ。

川越の朝のが、網膜を焼くように眩しかった。

舗装されたを歩きながら、私はく息を吐きした。 い息が、の気のに溶けていく。

「……奈緒さん」

隣を歩く松本さんが、し配そうに私の顔を覗き込んだ。

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「丈夫ですか?」

「……はい」 私は自分の両を見つめた。 指先が、まだしだけたい。 「すっごく……怖かったです。臓がびるかといました」

「派でしたよ」 松本さんは、ふっと目元を緩めた。 「言葉の端々から、奈緒さんの覚悟が伝わってきました。あんなに自分のを告げられるを、私はにりません」

「、笑っちゃうくらい震えてたんですよ」

「っています。だから、カバンを受け取ったんです」

そう言って、松本さんは悪戯っぽく笑った。 その屈託のない笑顔につられて、私の元からも、自然とさな笑いがこぼれ落ちた。

駅の通りにるまでの数百メートル。 私たちは言葉を交わさず、けれど並んで歩いた。 ただアスファルトを踏みしめる靴音がつ、規則正しくなりっていた。

引っ越した先は、川越駅から線沿いに歩いて分ほどの、築のワンルームマンションだった。

畳ひとのフローリングに、さなユニットバスとコンロのミニキッチン。 実の私の部よりも狭く、窓をければのるガタゴトという音が響いてくる。

けれど。

鍵を回して部に入った瞬、そこには誰の気配もなかった。 誰の嫌なため息も、誰かの理尽な命令も、私を値踏みするたい線もしない。

にペタンと座り込むと、畳とは違うたいフローリングの触が、素肌によかった。

松本さんは駅で荷物をろした、「ここから先は、奈緒さんがで築くですから」と言って、部にはがらずにそのまま幹線で野へ戻っていった。 どこまでも踏み込みすぎず、私の独を尊してくれる距が、たまらなくありがたかった。

そのの午、さな引越し業者のトラックが届き、最限の段ボール箱が部に運び込まれた。 夜には、自分で選んだ無の成りのカーテンをレールに吊るし、祖母の古い桐箱を部の隅に置いた。

夕は、くのスーパーで買ったさなお惣菜のパックと、自分で炊いたのご飯。 テレビのない静かな部で、お茶を啜る。 涙はなかった。 ただ、胸の奥に、じんわりと温かいスープが満ちていくような、確かな充があった。

私のしいが、ここから始まったのだ。

実が崩壊を始めるのに、はかからなかった。

引っ越してから週ほど経った頃、母から狂ったような頻度で着信が入るようになった。 最初は無していたが、あまりにしつこいため、平の昼休みに度だけ話にた。

『奈緒! あんた、今すぐ実に戻ってきなさい!』

をつんざくような母の鳴。 けれど、以のような威圧はなく、声は完全にパニックに陥っていた。

『のがめちゃくちゃなのよ! お父さんは血圧の薬をどこにしまったか忘れて鳴り散らすし、ゴミしのを違えて所のから鳴り込まれたのよ! 黄い警告シールを貼られて、ゴミ袋を突き返されたの! 恥ずかしくても歩けないわよ!』

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