"姉の身代わりで謝罪したら「最初からあなたをご指名です」" 第16話
「結婚なんて、まだ決まってないよ」 私は絞りすような声で言った。 「今、を見て、しお話ししてきただけ。お互いのことをるのはこれからだって……」
「何言ってんのよ、馬鹿ねぇ!」 母が私の肩をバシッと叩いた。 「相がその気になってるんだから、鉄はいうちに打て、よ! 吉田専務のもあるんだから、グズグズしてたらの女に取られちゃうじゃない! 結婚式は今の、のがいいわね。京の帝国ホテルか、目黒の雅叙園あたりを押さえさせなさい。あっちが全額すのが筋でしょうし!」
「母さん、気がいぞ」 父がにやにやしながらを挟む。 「まあしかし、相がそれなりの資産なら、結納も相応の額を包んでくるだろうな。奈緒、おをここまで育てるのに、うちも相当な教育費をかけてきたんだ。向こうの親御さんにも、そのあたりはきちんとしてもらわんとな。……ああ、それから私のだが、そろそろ検でね。向こうはでもたくさん持ってるんだろう? 台、いいハイブリッドカーでも回してもらえないか聞いてみてくれ」
を疑った。
教育費? 私はをてすぐ、元のの夜に通いながら学費を自分で払った。 学にかせてもらい、留学までさせてもらったのは姉の綾だけだ。 それなのに、どのが「育ててやった」
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などと言えるのだろうか。
「ちょっと、あんたたち」
に、く刺々しい声がリビングに響いた。
ソファに座っていた綾が、ゆっくりとちがった。 その顔はりと屈辱で青く引きつり、にしたスマートフォンの画面を爪でギリギリと擦っていた。
「調子に乗るのもいい加減にしなよ。みっともない」
「綾……?」 母が戸惑ったように眉をひそめる。
綾は私を瞥すると、でたく笑った。
「座の百貨に卸してる? 名士? 笑わせないでよ。方の品加なんて、原材料が騰したり、ちょっと異物混入の噂がっただけで発で倒産するような自転操業に決まってるじゃない。そんな舟に乗っかる気?」
姉の言葉は、松本さんのを配しているのではない。 自分が見し、ドタキャンした相が、実は価値のあるだったという現実を受け入れられないだけだ。 そして何より、常に自分の引きて役だった妹が、自分よりも「条件のいい結婚」をすることが許せないのだ。
「奈緒、あんた本気で勘違いしてんじゃないわよ」
綾が私の目のに歩み寄り、顔をづけて囁いた。
「向こうの男が、あんたの何を気に入ったとってんの? 半ばの、若くも美しくもない、垢抜けない事務員よ? 決まってるじゃない。答えもしない、文句も言わない、曇野の田舎でタダ働きしてくれる従順な女が欲しかっただけよ。
あんた、体よく買い叩かれてるだけなの。れね」
胸がチクリと痛んだ。 数、私が特急ので怯えていたまさにその疑を、姉は正確に抉り取って投げつけてきた。
けれど。
今の私には、あの話があった。 私の恐れを受け止め、自分の言葉のりなさを恥じ、対等に向きうと誓ってくれた松本さんの声があった。
「違うよ」 私は姉の目をまっすぐに見据えて言った。 「松本さんは、そんなじゃない」
「はっ! 会って数で男の本性が分かるわけないでしょ! 世らずが!」 綾が声を荒らげる。
「いい加減にしなさい、綾!」 母が割って入った。 しかしそれは、私を庇うためではなかった。
「奈緒の結婚にケチをつけるんじゃないの! あんたが結婚するのマンションのだって、奈緒の嫁ぎ先がし面してくれるかもしれないんだから!」
「……は?」 私はわず母を見た。 「何言ってるの……? なんで松本さんが、お姉ちゃんのマンションのおをすの……?」
「当たりでしょうが!」 母は何の恥じらいもなく叫んだ。 「妹が資産に嫁ぐんだから、実の援助をするのは当然の義務よ! あんた今まで実にろくにおも入れないで、好き勝に暮らしてきたんだから、これくらい恩返ししなさいよ!」
目のの景が、ぐにゃりと歪んだような気がした。
ろくにおを入れないで? 毎万円の活費を渡し、用品を買い、事をに引き受けてきた。