"姉の身代わりで謝罪したら「最初からあなたをご指名です」" 第6話
「どういうことも何も、言った通りだよ」
私は持っていたバッグをに置き、母のにった。
「松本さんは、最初から私とお見いをするつもりだった。仲さんにもそう伝えてあったのに、うちが勝にお姉ちゃんをかせようとして、挙げ句の果てにドタキャンした。そういうことでしょ」
「そんなはずないでしょうが!」
母がテーブルをバンと叩いた。
「仲の吉田さんから連絡があった、確かに『お嬢さんにいいご縁がある』って言われたのよ! お嬢さんって言ったら、普通は女の綾のことだとうじゃない! あんたなんかにそんな話が来るわけないって、誰だってそう考えるわよ!」
あまりの言いに、喉の奥がカッとくなった。
あんたなんかに。 母のから、何の躊躇もなくこぼれ落ちるその言葉。 、私のを削り続けてきた呪い。
「吉田さんに確認したの?」
私が静かに問いかけると、母は瞬だけ言葉に詰まり、目を泳がせた。
「……か、確認したわよ。さっき、話したわよ」
「なんて言われたの」
母の代わりにをいたのは、ソファに座っていた父だった。 父は気まずそうに咳払いをし、私と目をわせないようにしながら言った。
「……吉田専務、かなりっておられたよ。『にはっきりと次女の奈緒さんにといたはずだ。それを女に変えようとしたに、当にすっぽかすとはどういう見だ』って……私の会社代の恩になんて恥をかかせてくれたんだ、おたちは」
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「お父さん、それは私じゃなくて、お母さんとお姉ちゃんが……」
「言い訳をするな!」
父が声を荒らげた。 自分には何の落ち度もないと主張するための、いつもの防反応。
「どっちにしたって、うちの恥を晒したことに変わりはないんだ! 相は野の零細企業とはいえ、吉田専務の顔をつぶすわけにはいかんのだぞ!」
「ちょっと待ってよ」
それまで黙って爪の入れをしていた綾が、たい声で割って入ってきた。 級なシルクの部着を揺らしながら、子に背もたれを預け、私を値踏みするように見げる。
「何よそれ。じゃあ何? その松本とかいう男は、私じゃなくて、最初から奈緒を指名してきたってわけ?」
「そうみたい」
私が答えると、綾の元が侮蔑のに歪んだ。
「はっ……笑わせないでよ。見る目がないにも程があるんじゃない? 半ばの、化粧っ気もなくてもない女をご指名なんて。どうせ、曇野の奥で文句も言わずに畜の世話でもしてくれる都のいい女が欲しかっただけでしょ。あーあ、かなくて本当に正解だったわ」
勝ち誇ったように言い捨てる姉の瞳の奥に、私は見逃さなかった。 かすかな、けれど隠しきれない苛ちとプライドの揺らぎを。
『自分が断った男』が、実は『自分など最初からに置いていなかった』という事実。 常に選ばれる側、称賛される側にってきた姉にとって、それは耐え難い屈辱だったのだ。
「あんたも調子に乗んじゃないわよ、奈緒」
綾は細いを組み替え、たく言い放った。
「ちょっと男に持ちげられたからって、いがってんじゃないわよ。方のさな加なんて、いつ潰れるか分かったもんじゃないんだから。京でバリバリ稼いでる私とはむ世界が違うの。せいぜい、すすって苦労すればいいじゃない」
「……私は、いがってなんかない」
「だったらその話、断りなさいよ!」
母が叫んだ。
「え?」
「断るのよ、そんな縁談! 田舎の主なんて、ろくなもんじゃないわ! 吉田専務には『妹も分相応でお受けできません』って、私が菓子折り持って謝りにってあげるから! あんたがそんなくに嫁がれたら、このの事は誰がやるのよ! お父さんの健康管理だってあるのよ!?」
本音が、剥きしになって零れ落ちた。
世体でも、私の幸せでもない。 ただ、自分たちの活を支える『無料の政婦』を失いたくない。 それだけだった。
の私の奉仕は、このたちにとっては空気と同じで、失われて初めて「便だ」と騒ぎてるものに過ぎなかったのだ。
元から、すうっと血の気が引いていく。 けれど同に、奇妙なほど静な自分がいた。
「断らないよ」
私は、はっきりと言った。