"「あの担当者はどこだ」社長の一言に凍る年下上司" 第15話
ロッカーで濃紺のスーツを脱ぎ捨て、と油の染み込んだ、支品の作業着に袖を通した。 全靴の紐をきつく締め直し、保護メガネを胸ポケットに差す。
渡り廊を駆け抜け、の扉を押しけた。
そこには、すでに野寺さんと、の班連が集まっていた。 旋盤の削りカスが散らばる作業台のには、私が持ち帰った宮本精密の図面がきく広げられている。
「佐藤さん」
旋盤のベテラン、荒さんが、油に汚れた軍をしながら私を見た。 今でになる、このの叩きげだ。
「話は野寺から聞いたよ。宮本のオヤジ、の過負荷テストを突きつけてきやがったんだってな」
「ええ。無茶な条件です。断ることもできました。ですが——」
「バカ言え」
荒さんがく笑い、作業台のの図面を拳で叩いた。
「断られてたまるかよ。あの田辺とかいう青才に『の腕が悪い』だの『夜勤で帳尻わせろ』だの散々コケにされて、職が引きがれるとってんのか? うちの浸炭焼入れの粘りを、あの宮本が見たいってんなら、見せてやろうじゃねえか」
荒さんの背で、若い械オペレーターたちも静かに頷いていた。
会社の層部が数字の帳尻わせに狂奔し、互いに責任を押し付けっているも、この暗いで鉄と向きい続けてきた男たちだ。
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彼らは飢えていたのだ。 ノルマの奴隷としてではなく、真の技術者として、自分たちの仕事を信じてくれる誰かを。
「始めましょう」
野寺さんが、夜勤の程表をホワイトボードに叩きつけるように貼りした。
「試作ラインの空きは、本線が止まる午から朝のまでの。処理炉の枠は、隣の協力の社に佐藤さんが直談判して、曜の未に枚だけ炉を空けてもらいました。猶予は。分も無駄にはできません」
「よし、を入れろ!」
荒さんの号とともに、夜のが息を吹き返した。
そこからの週、私の記憶は、鉄の匂いと切削油の煙のにしかない。
昼は営業支援課としての最限の伝票処理を片付け、夕方からはに籠もった。 夜。 凍てつくようなのので、赤くせられた鋼材が油槽へと沈められるたび、ジュウウウッという凄まじい蒸気と炎がちる。
「却速度、コンマ秒遅い! 引きげろ!」
荒さんの鳴り声が響く。 私はストップウォッチを握りしめ、油のね返りを顔に浴びながら、炉の温度計を睨み続けた。
トラブルがなかったわけではない。 目の未、仕げ研磨を担当していた古い平面研削盤の主軸から異音が発し、部品の真円度に百分のミリの振れがた。
「クソッ、ベアリングが焼き付いてやがる……!」
研削の青が青ざめ、を抱えた。 予備のスピンドルユニットは社内にない。メーカーに発注すれば届くのは週。 完全に、万事休すの瞬だった。
「諦めるな」
私は軍を脱ぎ、たい械のフレームにを当てた。
、まだ自分が代の駆けし営業だった頃、毎のように通い詰めていた阪のさな精密ベアリング。 あの町の頑固親父が、夜でもにかりを灯して図面を引いていた姿が、脳裏を閃いた。
私はそので携帯話を取りし、いていなかった古い帳の番号を押した。
「……夜分に申し訳ありません、川勝さん。に変お世話になった、佐藤です」
話の向こうで、老いた職のダミ声が響いた。 事を、飾らずに、ありのまま話した。 今、目ので若い連が命がけで削っている鉄を、どうしてもまでに仕げなければならないのだと。
。 軽トラックを自ら運転して、髪の川勝さんがのシャッターのに現れた。 助席には、油に包まれた、特注仕様の超精度アンギュラベアリングが載せられていた。
「佐藤ちゃんよ」
川勝さんは皺だらけの顔をほころばせ、私の作業着の肩をバンと叩いた。
「あんたが夜に話してくるなんざ、ろくな用件じゃねえとったよ。
だがな、昔あんたがうちの親父の葬式で最まで受付伝ってくれたこと、俺は忘れてねえぞ。