"「あの担当者はどこだ」社長の一言に凍る年下上司" 第13話
「本部」
私は、凍りついた島に向かって静かに言った。
「宮本社がっているのは、納期が遅れることそのものではありません。『できないことを、できると偽って売りつける』という、製造業としての魂の腐敗に対してです」
私は万を取りし、テーブルのの職務権限規程に、自らの名を署名した。
「私には、この会社で培ってきた、現の職たちとの信頼があります。野寺主任と組んで、現実かつ最も全な『段階納入計画』を作り直しました。これを持って、私が宮本精密へきます」
島は、震えるでその類を見つめていた。
もはや、選択肢などどこにもなかった。 拒否すれば、野寺のにあるログがそのまま監査役と社へ提される。 島に残されたは、私という「かつて切り捨てた男」に、会社の命運を丸ごと預けることだけだった。
島は、震えるで内ポケットから役職印を取りした。 朱肉の匂いが、苦しい空気に混ざる。
カツン。
い決裁印が、私の名の横に力なく押された。
「……頼む、佐藤」
島は、絞りすような声で言った。 その顔には、かつて私を窓際へ追いやったの傲さは、欠片も残っていなかった。
「会社の首を……繋いできてくれ」
私は無言で規程をに取り、ちがった。 席をつ際、を見つめて刻みに震えている田辺の肩を、度だけ見ろした。
広告
言葉はかけなかった。 現を蔑み、技術を軽んじたに、かける言葉など何つ持ちわせてはいなかった。
「野寺さん、品保のさん。こう」
「はい!」
のたるが、力く頷いて私のろに続いた。
午。 再び訪れた宮本精密の本社。
がりの空はく澄み渡り、の根からは規則正しい属の加音が、力い鼓のように響いていた。
通されたのは、昨と同じ第応接。
扉がき、現れた宮本社は、昨と同じ濃紺の作業着姿だった。 だが、その目元には隠しようもない厳しさと、徹な警戒が張り付いていた。
社は、私の隣につ野寺と品質保証のを瞥し、最に私へと線を固定した。
「……何の真似だ、佐藤君」
く、突き放すような声だった。
「うちは昨、正式に通告を送ったはずだ。会社の板をいくら掛け替えて、をげに来たところで、結論は変わらんよ」
「をげに来たのではありません」
私は歩にみた。
そして、昨田辺が広げたようなっぺらなカラーのプレゼン資料ではなく、枚の無骨な青焼きの図面と、現のデータがびっしりとき込まれた程表を、テーブルのに静かに広げた。
「宮本専務」
あえて、の肩きで呼んだ。
「現のが社のの実力値と、限界を、すべてお話しに参りました」
宮本社の眉が、ピクリといた。
「田辺が提示した週の納期は、完全な虚偽です。当社のライン稼働率、および処理炉の空き枠から計算して、全数の完全納入には、最でも週をします」
野寺が、処理炉の予約データと資材の入線証を差しす。 が、非調質鋼ではなく、従来の浸炭焼入れ材を用いたの、疲労限度試験のデータを提示する。
「週で全数を揃えることは能です。ですが……」
私は図面のある点を指首で叩いた。
「御社の種ちげにおいて、最も先して組付けが必なメインシリンダー部のセット。これに限れば、当社の試作発ラインを緊急割り込みさせ、従来のSCM材による完全な浸炭焼入れ程を踏んだで、週での納品が能です」
宮本社は無言のまま、図面と程表に線を落とした。 その鋭いが、野寺がき込んだ職のきのメモや、歪み測定の公差限界の数値を、ミリ単位でトレースしていく。
部のを、沈黙が支配した。 壁の計の針が、秒、また秒とんでいく。
野寺が緊張で拳を握りしめているのが、横目に伝わってきた。
やがて、宮本社はゆっくりと顔をげた。 その瞳の奥から、昨私を突き放したのあのえ切ったりは消えていた。 代わりにそこにあったのは、真贋を見極めようとする、純粋な技術者の厳しいだった。