"「あの担当者はどこだ」社長の一言に凍る年下上司" 第8話
と嘘の報告をげていたのだ。
すべては、今期の自分の営業ノルマを達成するためだけに。
「野寺さん。その握りつぶされた警告メール、ログは残っているかい?」
「……もちろん、全部ローカルにバックアップ取ってあります。何かあった、のせいにされてクビを切られるのは御免ですから」
野寺は唇を噛み締めながら、私をじっと見つめた。
「でも佐藤さん、どうする気ですか? こんなこと暴いたって、今の営業部で田辺課に逆らえるなんていませんよ。本部のお気に入りだし……それに、佐藤さんのだって……」
「私のなら、とっくに失うものなんてないよ」
私は自嘲気に微笑んだ。
「ただね、野寺さん。私は、あの宮本精密ので、部品が破断して油まみれになってち尽くす職たちの姿を見ているんだ」
ちがり、窓のを見ろす。 に煙る夜のヤードで、フォークリフトの黄い回転灯が、虚しく滅を繰り返していた。
「技術を数字の具にして嘘をつくを、このまま野放しにはできない。それは、この会社で鉄を売ってきた、私の最の仕事だ」
野寺は、息を呑んで私を見げていた。 その瞳に宿っていた諦めのが、微かに揺らぎ始めているのが分かった。
翌朝。 はがり、からたいのが差し込んでいた。
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フロアに社した私は、昨夜野寺から受け取った産スケジュールの実データと、過の宮本精密向け納入実績の比較資料を、通のクリアファイルにまとめていた。
論ではない。 数字と、学な事実だけを積みげた、逃げのないレポートだ。
これを、営業本部の島浩に直接渡す。 それがどれほど組織の掟破りであり、窓際の平社員が犯してはならない越権為であるかは、百も承だった。
だが、これ以田辺の暴を許せば、宮本精密との関係が永久に破綻するだけでなく、が社は業界内で致命な信用失墜を招く。
クリアファイルを胸に抱え、役員フロアへと続くエレベーターホールのへと向かった。
そのだった。
「……佐藤」
背から、く威圧な声がかけられた。
振り返ると、チャコールグレーのスリーピーススーツにを包んだ初老の男が、厳しい目をこちらに向けてっていた。
営業本部、島浩、歳。 かつて私と同期入社でありながら、領よく社内政治を泳ぎ切り、現の実権を握る男だ。 そして、私を営業支援課へと追いやった張本でもあった。
「本部。おはようございます。ちょうど、お話ししたいことが——」
「宮本精密の件だろう」
島は、私の言葉をたく遮った。
その表には、がありありと浮かんでいた。
「田辺から報告は受けている。おが商談のにしゃしゃりて、つまらん昔話を持ちして先方の社をにさせたそうだな」
……やはりそう吹き込んだか。
「本部、それは事実ではありません。田辺課が提した提案には、致命な虚偽があります。の承認を得ていない無理な納期設定と、耐久性を無した材質変更です。このままでは——」
「佐藤」
島が歩、いを詰めてきた。 私を威圧するように、たい線が至距から突き刺さる。
「おはもう、営業のじゃないんだ」
く、しかし拒絶に満ちた声だった。
「おのその『現の都を優先して商を逃すやり方』が古いと言っているんだよ。今はスピードの代だ。のリスクを背負ってでも、まずを引っ張ってくるのが田辺のような優秀な営業の仕事だ。それをろからを引っ張るような真似をして……も会社にいて、まだ自分のが分からんのか?」
「リスクの次元が違います! あれは契約履と製品事故に直結する犯罪な数字です!」
「黙れ!」
島が声を荒らげた。 エレベーターを待っていたの社員たちが、斉に怯えたように線を伏せる。
「いいか、佐藤。度と田辺の案件にを挟むな。次に同じような越権為をしたら、支援課の席すらなくなるとえ。分かったら、おのデスクに戻ってしくコピーでも取っていろ」
島はそう吐き捨てると、私から線を切り、ちょうど到着した役員用エレベーターへと乗り込もうとをにした。