"「あの担当者はどこだ」社長の一言に凍る年下上司" 第1話
「おい佐藤、鍵だ。今はあんたが運転しろ」
デスクの端に、属のたい塊が投げつけられた。
差し指で弾かれたプリウスの子キーが、私の名刺入れを弾きばし、フロアのっぽいタイルカーペットので鈍い音をてて転がる。
顔をげると、歳の課、田辺健太が、仕てのいい細のスーツの袖をえながら私を見ろしていた。
「ぼさっとすんなよ。宮本精密とのアポ、だぞ。がりそうだから首都混むだろ。く回してこい」
……は?
「田辺課、本の商談は役員会にも報告ががっている型案件のはずです。営業の運転なら、若の総務か——」
「社内リソースの効活用ですよ、佐藤さん」
田辺はで笑った。 角だけを吊りげるその笑い方は、この男が途採用で鳴り物入りで入社して以来、度も変わっていない。
「今のあんたの仕事、何でしたっけ? 営業支援課のデータ打ち込みと、カタログの庫管理? そんなの夕方戻ってきてからでもできるでしょ。にもなって社内ニートみたいな顔して座られてるより、ハンドル握ってるほうがよっぽど会社の数字に貢献できますよ」
フロアのあちこちから、キーボードを叩く音が自然に止まる気配がした。
代、代の若い営業部員たちが、パソコンのディスプレイのからこちらを盗み見ている。
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誰もを挟まない。 庇うなど、このフロアにはもいない。
まで、私はこの営業部のである産業械第課で、数にわたり案件の最線にっていた。 だが組織再編の波に呑まれ、役職を解かれ、追いやられたのが「営業支援課」という名の窓際だった。
名刺から「課代理」の文字が消え、決定権も、予算も、担当顧客もすべて奪われた。
残されたのは、の社歴と、し髪の混じったと、こうしての課から顎で使われる惨めな常だけだ。
胃の底が、たい鉛をみ込んだようにくなる。
「……分かりました。駐にを回します」
私は膝を折り、に落ちた鍵を拾いげた。 指先に触れたプラスチックの触が、妙にたかった。
首都の渋滞の、部座席にふんぞり返った田辺は、ずっとスマートフォンの画面をタップし続けていた。
助席ではなく、当たりのように部座席の真んに座る。 バックミラー越しに見えるその顔には、隠しようもない苛ちと焦りが張り付いていた。
「おい佐藤、もっと線けよ。いてるだろ」
「この先で流線が絞られます。今にると、かえって減速に巻き込まれます」
「いいからせって言ってんだよ。商談にイライラさせんな」
舌打ちの音が、静かな内に響く。
私は何も言わず、指示通りにウィンカーをした。案の定、トラックの列に塞がれ、スピードメーターの針がゼロに落ちる。田辺は再びさく舌打ちし、ワイヤレスイヤホンをに押し込んだ。
「あ、本部ですか? 田辺です。ええ、今向かってます。宮本精密の件、今で決めますよ。ええ、プレゼン資料も競を完全に潰す仕様に作り直しましたから。今期の数字、これで発で達成です。……はい、お任せください」
甘ったるい、しかし媚びを含んだ声。
田辺が話を切った、私はバックミラー越しに声をかけた。
「田辺課。宮本精密への提案、先ほどプリントアウトを頼まれた際にし拝見しましたが」
「あん? 見たの? 別にあんたに見せるために刷らせたんじゃないんだけど」
「処理程の仕様、旧ロットの浸炭焼入れから、発の周波焼入れに変更されていますね。それに納期設定ですが……実質週になっていました。のラインスケジュールは確認されたのですか?」
田辺は骨に眉をひそめ、タブレットから顔をげた。
「何が言いたいの?」
「宮本精密の作械は、極限状態での耐久性を最優先する現で使われています。処理の期をそこまで圧縮し、かつ仕様を変更するとなると、初期ロットでの歪み検査と実テストに最でも週は必です。
週での納品は、物理にが回りません」
「ハッ」
乾いた嘲笑が返ってきた。