"朝食が5分遅れて平手打ち、夫は「母さんを怒らせるな」" 第10話
メッセージを読みながら、私はかつて夫が放った言葉をいしていた。
「お、事務職で休みやすいだろ。母さんの病院に付き添うくらい、したじゃないだろ」
したじゃない? あのの拘束と、終わりのない愚痴と理尽なつ当たり。 それを「嫁の当然の務め」として、私に平気で丸投げしようとしていたのだ。
自分でやってみて、初めてったのだろう。 自分がどれほど残酷な求を妻に押し付けていたのかを。
さらに、獄は病院のでも続いていた。
夕方、疲れ果てて義母を連れて帰宅した夫を待っていたのは、ゴミ敷と化したリビングだったという。
定退職した義父は、昼の準備すら自分でできず、を取ったラーメンの容器をテーブルに放置。 シンクには曜の法事の残骸と、洗われていない器が盛りのまま放置され、異臭を放っていた。
「腹が減った。飯はどうなってるんだ」
帰宅するなりそう言った義父に対し、極限まで疲弊していた夫がブチギレた。
「俺が、母さんの子押して病院駆け回ってたのってるだろ! なんで親父が飯の準備すらしてないんだよ! 自分のことくらい自分でやれよ!」
「なんだそのの利き方は! 父親に向かって偉そうに! ののことは女の仕事だろうが! おが嫁に逃げられるようなけない男だから、こんなことになるんだ!」
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「逃げられたのは母さんの暴力のせいだろ!」
「あんたたち、私ので鳴りわないでよ! 膝が痛いのよ! 誰か湿布貼って、お茶持ってきなさいよ!」
号と罵声がび交い、最は義父が自に鍵をかけて引きこもり、義母はリビングで過呼吸気に泣き叫び、夫はを抱えてにへたり込んだ――。
麻さんからの実況を読み終えた、私のに湧きがったのは、同でも勝利でもなかった。
ただ、背筋が凍るような【気悪さ】だった。
たった数まで、あのは「派な男」「従順な嫁」「円満な庭」という世体の仮面を被っていた。 だが、その実態は、誰かが犠牲になってすべてのをかぶらなければ、たりとも維持できない欠陥宅だったのだ。
私がそのクッション役をりた瞬、彼らは自分たちのみで自壊を始めた。
自業自得だ。 これ以、あの舟に関わる義理はどこにもない。
私はそのの帰り、産にち寄り、会社のくにある築浅のワンルームマンションを契約した。 保証の続きも、自分の名義で全て済ませた。
もう、誰かの顔を伺って暮らすは、輪際ごめんだった。
曜の夕方。
の陽が落ちるのはく、定を過ぎた18には、会社の周囲はすっかりのに包まれていた。
エントランスの自ドアを抜け、に駅へ向かおうとした、そのだった。
「……由美」
のから、ぼろ雑巾のようながふらりと現れた。
臓が、トクンとねる。
夫だった。
たった数会わなかっただけなのに、見違えるほどやつれ果てていた。 着慣れたはずのスーツは皺だらけで、ネクタイは曲がり、目のにはどす黒いクマが張り付いている。 髪の毛はボサボサで、無精髭が顎の周りに伸びていた。
そのには、百貨の級そうな袋がぶらがっている。
「……何の用ですか」
私は歩、ずさりした。 バッグの紐を握り直す。
「由美……頼むから、逃げないでくれ」
夫は泣きしそうな顔で、すがるように両を胸のに突きした。
「話があるんだ。しだけでいい。駅の喫茶でもいいから、頼むよ……この通りだ」
くをげる夫の姿に、通り過ぎる会社帰りの々が怪訝な線を向けてくる。 ここで騒ぎてられれば、会社に迷惑がかかる。
「……駅のドトールなら。15分だけです」
「ありがとう! ありがとう、由美……!」
夫はすがるように頷き、私のを追ってきた。
内に入り、番隅の席に座る。 夫は百貨の袋から、丁寧にリボンがかけられた菓子の箱を取りし、テーブルのに置いた。
「これ、由美が好きだったモンブラン。買ってきたんだ。ずっと、由美に謝らなきゃってってて……」
箱を見つめる私の目は、え切っていた。
付きっていた頃、私が「になるとモンブランがべたくなる」