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"「負けを認めろ」と言った義母が、産院で凍りついた日" 第11話

「佐藤のの跡継ぎ」という妄に取り憑かれ、息子の犯した背任為をすべての犠牲で埋めわせようとする、暴したエゴの塊だった。

「分かりました」

私は卓を鞄にしまい、ちがった。

「その答えを、しっかりと覚えておいてくださいね」

「ふん! 勝ち目がないと分かって逃げる気ね! 曜の健診が終わったら、度とこの敷居を跨がせないからね!」

背に浴びせられる静の罵声を、私はえ切ったで受け流した。

話は、もう完全に終わった。 これ以、こので交わす言葉は何つない。

曜の朝。 のえ込みが段と厳しい、く曇っただった。

私が支度をえてリビングへりていくと、そこには目を疑うような景が広がっていた。

義母の静が、まるで親族の結婚式にでも参列するかのような、格式のい訪問着にを包んで座っていたのだ。 緑の等な絹に、控えめな糸の刺繍。 髪は所の美容院で綺麗にセットされ、首元には粒の真珠のネックレスがっている。

隣には、輔がいた。 何もに仕てたきり、冠婚葬祭でしか着ないブランド物の濃紺スーツを羽織り、鏡ので何度もネクタイの位置を直している。

「母さん、着物、よく似ってるよ」

「当たりでしょう。佐藤のの当主の母として、恥ずかしくない格好をしていかないとね。

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あちらのご両親にいつお会いしてもいいように、格式を示してあげないと、彩さんもできないでしょうから」

静は鏡での乗りを確認しながら、うっとりと微笑んでいた。

「病院の待で、みすぼらしい姑だなんてわれたら事よ。健、のはもう効いているの?」

「ああ、バッチリだよ。彩がえないように、助席にブランケットも積んである」

これから向かう所が、ただの産婦科の待であることを、は完全に忘れているようだった。 まるで、凱旋パレードに向かう王族気取りだ。 その浮かれ切った姿は、滑稽を通り越して、寒気すら覚えるほどグロテスクだった。

静が、私のなパンツスーツ姿を瞥し、を鳴らした。

「真紀さん、あなたもついてくる気? 惨めないをするだけよ。若い彩さんの輝くような姿を見たら、自分がどれだけ干からびた役たずか、いることになるわ」

「ええ、きます」

私はバッグの持ちをく握り直した。

「約束ですから。しい奥様とお腹のお子さんの姿を、この目でしっかりと見届けさせていただきます」

「フン、往際が悪いこと。……健、きましょう。あの子をあんまり待たせたらだわ」

は私の返答など聞き流し、に玄関をてった。 ガレージから輔のセダンが滑りす音が聞こえる。

私は、静まり返った玄関にち、スマートフォンを取りした。

「もしもし、先。……今、が発しました」

受話器の向こうから、静な声が返ってくる。

『分かりました。こちらもすでに病院くのパーキングに待しています。森彩さんとも連絡が取れました。指定の午、正面ロビーで流しましょう』

「よろしくお願いいたします」

通話を切り、私はく息を吸い込んだ。

たい空気が、肺の奥を満たす。 指先の震えは、もう完全に止まっていた。

午分。 私鉄の駅から徒歩分の所にある、『○○レディースクリニック』。 レンガ調の壁に、入れのき届いた植栽。 ホテルのラウンジをわせる、都内でも評判の級産婦科医院だった。

自ドアをくぐると、かな空気と共に、静かなクラシックのBGMがに届く。 い井、接照に照らされたピンクとベージュを基調とした待ロビーには、何組かの夫婦が静かに寄り添って座っていた。

その空の空気を、完全に切り裂くような異様な団が、すでに央の革張りソファを陣取っていた。

着物姿の静と、スーツ姿の輔だ。 平の昼がりの産婦科に、訪問着を着た齢女性と張羅のスーツを着た男。 周囲の妊婦やその夫たちが、怪訝な線を向けていることにも、は全く気づいていない。

輔は落ち着かない様子で何度も腕計を見つめ、静は背筋を伸ばして周囲を威圧するように見回していた。

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