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"四十八歳、二十五年の家事を「無職」と呼ぶ夫へ" 第19話

変化は、ヶ目から現れた。

度末の施設利用に関する、域団体からの激しいクレーム話。 若い職員が青ざめてち往していた受話器を、私は自然と引き取っていた。

相の言い分を遮らず、まずはりの奥にあるを丁寧に聞きし、政のルールと団体の望の落としどころを、静かに、けれど粘りく提示する。

分。 鳴り散らしていた相が、「……川さん、あんたに当たって悪かったね。次からは気をつけるよ」と静かに話を切った。

フロアが、しんと静まり返っていた。

「川さん……すごいですね」

若い職員が、驚いたように目を丸くしていた。 課も奥のデスクから顔をげ、「助かったよ、川さん。さすが現の修羅をくぐってきたは腰が据わってるな」とさく頷いた。

夕方、タイムカードを押してオフィスをるとき、私の取りは羽がえたように軽かった。

自分の経験が、誰かの役にった。 社会の歯のひとつとして、ちゃんと噛みっている。 その確信が、何よりの栄養剤だった。

。 指定した座に、初めての与が振り込まれた。

記帳された額は、額面で万千円。 税や社会保険料を引かれ、元に残ったのは万円。

メーカーで管理職をしていた元夫の料袋に比べれば、半分にも満たない端かもしれない。

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けれど、それは紛れもなく、私自の名で、私の労力に対して支払われた、私だけの尊厳の結晶だった。

駅のスーパーで、いつもなら素通りしていたしい牛肉のパックを、私は迷わずカゴに入れた。

を迎え、桜が散り始めた頃。 アパートのインターホンが鳴った。

覗き穴を見ると、グレーのパーカーを着た男の亮が、居悪そうにっていた。

「……亮」

ドアをけると、息子は線を泳がせながら、さな声で「ちわっす」と呟いた。 には、コンビニのビニール袋がぶらがっている。

「……入っていい?」

「ええ、どうぞ」

狭い玄関に、息子のきなスニーカーが並ぶ。 部に入った亮は、畳の空と、窓辺のさな丸テーブルを見て、息を呑んだ。

「狭っ……マジで、ここでひとりで暮らしてんの?」

「適よ。掃除もすぐ終わるし、当たりもいいし」

私はテーブルにお茶をし、息子の向かいの子を勧めた。 亮はぎこちなく腰をろし、ビニール袋からシュークリームの箱を取りして、テーブルの端に置いた。

「これ……駅で買ったから」

「ありがとう」

しばらく、沈黙が流れた。 をるの音が、静かな部に響く。

亮は膝ので拳を握りしめ、ずっとを見つめていたが、やがて絞りすようにをいた。

「母さん……あのは、ひどいこと言って、ごめん」

声が、かすかに震えていた。

「俺、自分のことしか考えてなかった。『母さんがすればいい』なんて……最なこと言った。本当に、ごめん」

歳の息子の、器用な謝罪。

あの、リビングで私のを「無料の防波堤」にしようとした息子の言葉は、確かに私のをく抉った。 けれど、今こうしてをげる息子の姿を見て、胸の奥の澱がすうっと消えていくのをじた。

「いいのよ、亮」

私は静かに言った。

「あなたにとっても、急なことで怖かったのよね。が揺らぐのが怖くて、必だったんでしょ」

亮はさく頷き、目元をで覆った。

「親父のアパート……先週、回だけったんだ」

「……そう」

「すげえ荒れてた。部、コンビニのゴミと脱ぎっぱなしのだらけでさ。親父、すげえ老け込んでて……俺の顔見るなり、『母さんにやり直す気はないか聞け』って、そればっかりでさ」

亮は吐き捨てるように首を振った。

「けなかった。親父、会社でも役職定で窓際の部署にばされたらしくてさ。愚痴ばっかりで、酒臭くて……俺、あんな親父、見たくなかったよ」

私は何も言わなかった。 同も、ざまあみろという優越も湧かなかった。 ただ、因果応報という言葉が、静かにをよぎっただけだった。

の尊厳を踏みにじり、無償の労働を搾取し続けたが、そのを失ったにどうなるか。 あのは今、自分が蒔いた種を、自分で刈り取っているだけに過ぎない。

「母さん」

亮は顔をげた。その目には、以のような甘えは消えていた。

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