"四十八歳、二十五年の家事を「無職」と呼ぶ夫へ" 第12話
自分がどれだけ、私の無償労働という「駄」を履かされ、制度の恩恵を占めにしてきたのかを。
そのだった。
ドスン、と乱暴に部のドアがいた。
「おい、子!」
っていたのは、眉を激痛に歪め、腹を押さえた夫だった。 ネクタイは曲がり、ワイシャツはシワだらけで汚れている。 連のとコンビニ弁当、そして私の「ストライキ」によるストレスのせいだろう。 顔は気で、油汗が浮いていた。
「胃薬はどこだ! キャビネットのどこにも入ってないぞ! おい、聞いてんのか!」
吐き捨てるような鳴り声。 けれど、その声には以のような威圧はなく、ただの苛ちと苦痛が混ざりっていた。
「胃薬なら、いつも置いてある引きしの分は先週で切れたわよ」
私はノートパソコンから目をさず、淡々と答えた。
「買っておいてくれって言っただろ!」
「言われてないわ。それに、言われたとしても買いません。自分の薬くらい、会社の帰りにドラッグストアで自分で買ってください」
「お……ッ!」
夫は激昂して机に詰め寄ろうとした。 だが、その線が、机のに几帳面に並べられた類のに釘付けになった。
番に置かれていたのは、本構の紋章が入った公類。 『分割のための報通』。
そしてその隣には、法務局の赤い印鑑が押された『登記事項証』と、私が作成した宅ローンの残債と売却益のシミュレーション表。
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夫のきが、凍りついたように止まった。 血った目が、類に印字された数字を泳ぐ。
「な……んだ、これ……分割……? なんで、こんなものが……」
夫の喉から、掠れた声が漏れた。
「勝に事務所にったのか!? おい! なんで俺のを勝に調べるんだよ!」
「勝じゃないわ。法律で認められた私の正当な権利よ」
私は、カタ、と音をててノートパソコンの画面を閉じた。
部のに、音だけが静かに響く。
私は子からちがり、シワだらけのスーツを着てち尽くす夫を、氷のように徹な目で見ろした。
「川さん、計算するなら、分のツケを法律通りに、きっちり清算しましょう」
夫の喉が、引きつった音をてた。
「……な、川さんだと?」
私の乾いた呼びかけに、夫の顔面から急速に血の気が引いていくのが分かった。 連れ添った妻から、赤ののように名字に「さん」付けで呼ばれる屈辱。 それが、どれほど鋭い刃となってプライドを切り裂いたか、痙攣する眉が雄弁に物語っていた。
「ふ、ふざけるな……! 誰のおかげでこのにめてるとってるんだ! お、自分が何をやっているのか分かってるのか!? 分割だと? 俺が、をすするいで会社に尽くして積みててきたを、横から掠め取ろうっていうのか!」
鳴り声が、狭い部の壁にビリビリと反響した。
唾がび、机のの類を濡らす。
けれど、声がきくなればなるほど、その瞳の奥に張り付いた揺が透けて見えた。
「掠め取る?」
私は机のの『分割のための報通』に、そっと指先を滑らせた。
「法律、の保険料は、夫婦の共同活ので納められたものとみなされるの。あなたがで残業できたのも、休勤で評価をげられたのも、誰が度の飯を作り、汚れの作業着を洗い、子供の学事と親の介護をに引き受けていたから? それを『掠め取る』と言うなら、この、私の無償労働を掠め取ってきたのは、あなたの方じゃない」
「なっ……!」
「計算、よく見て」
私はもう枚のプリントアウトを、夫の元へ放るように滑らせた。
「こののローン残債は約百万円。産の概算査定額から仲介数料と抵当権抹消費用、譲渡税を引けば、元に残る現は良くて百万円程度よ。それを半分に分ければ、百万円ずつ」
「に、百万……?」
夫の線が、のに並んだ酷な数字に釘付けになった。
「そんなはずはない! このは尾でも駅徒歩分圏内だぞ! 建物だってまだまだめる! 最でも千百万、いや千万には——」
「築の造建売宅に、物の価値なんてほとんど残っていないわ。査定にもいてあるでしょう。
『解体更渡しを推奨』って。