"四十八歳、二十五年の家事を「無職」と呼ぶ夫へ" 第8話
「でも……雅さんの言うことも、世には正論なのかなって、しっちゃうの。私、ずっと扶養の範囲内でしか働いてこなかったし、今の社会で通用するスキルなんて、何もないんじゃないかって」
俯く私に、恵理は持参していたクリアファイルから、数枚のプリントを取りして突きつけた。
「子、これ見て」
それは、恵理の会社や取引先で募集している、途採用の求票だった。
「総務や般事務の募集項。何ていてある? 『コミュニケーション能力』『スケジュールの調能力』『基本なPC操作』……特別なプログラミング言語がかれてる?」
「でも、実務経験が……」
「あなた、公民館で何パートやってるの?」
「……、かな。最初は週だったけど、ここは週で、フロアの責任者みたいなこともやってる」
「そこで何をしてたか、具体に言ってみて」
恵理に促され、私はいしながらをいた。
「ええと……施設利用の予約管理と、毎の使用料の集計。あと、域のサークル活の予算申請のチェックとか、度末の収支報告の作成補助。それから、々ある利用者のトラブル対応とか……」
「それよ!」
恵理がテーブルを軽く叩いた。カフェの隣の客が瞬こちらを振り返る。
「それのどこが『スキルがない』のよ! 予算管理、類精査、民トラブルの消し……派なプロジェクト管理じゃない。
広告
Excelの基本関数は使える?」
「SUMとかAVERAGEくらいなら。あと、任者が作ったマクロをかすくらいは……」
「分よ。VLOOKUPとピボットテーブルさえ覚えれば、企業の総務なら即戦力になれる。子、あなたはサボってたんじゃない。庭という番ブラックな職で、マルチタスクを完璧にこなしてきたの。自分を売りするのは絶対にやめなさい」
恵理のい差しに、界がじんわりとくなった。 夫から「おはただにいただけだ」となじられ、削り取られていた自尊の破片が、温かい言葉で拾いげられていくようだった。
「履歴のき方、直ししてあげる。今の企業の採用担当者がどこを見るか、全部教えるから。……でもね、子」
恵理は表を引き締め、声をくした。
「仕事を探すのと並して、絶対にやっておくべき公な続きがあるわ」
「公な続き?」
「法務局にって、の『登記事項証』を取ること。それから、事務所にって『分割のための報通』を請求することよ」
恵理は帳の切れ端に、サラサラと文字をき留めて私に渡した。
「ご主は、を売ってローンを引いた残りを半分渡せば、それで打ちにできるとってる。でも、本当の清算はそこからなのよ。婚姻期の記録は、法律、最で分のを分割請求できる権利がある。
ご主がどれだけ稼いで、どれだけを積みててきたか、その半分はあなたのものなの」
分割。 言葉としてはっていたけれど、それが自分自の老をするな権利なのだと、初めて腑に落ちた。
「子。で喧嘩しちゃダメ。相が傲なビジネスマン気取りなら、こっちは国の制度と数字で殴るのよ」
恵理の悪戯っぽい、けれど頼もしい微笑みに、私はく頷いた。
そので、私は駅の反対側にある法務局の張所へと向かった。
平の昼がりの法務局は、静まり返っていた。 申請に自宅の番を記入し、窓に提する。 数百円の数料を支払い、渡されたのは、い緑の模様が入ったA4の公類——『登記事項証』だった。
ロビーのベンチに座り、類に目を落とす。
【表題部】 所:埼玉県尾…… 番号:……
【権利部(甲区)(所者に関する事項)】 所者:川雅
【権利部(乙区)(抵当権に関する事項)】 債権額:千百万円 抵当権者:〇〇 債務者:川雅
文字を指で追う。 確かに、所者は夫の単独名義だ。 けれど、乙区に記された抵当権の設定と、残の計算をので反芻する。
結婚して目に組んだローン。 あと残すところ、約分。 元はおそらく、百万円から百万円程度残っているはずだ。
先の産が漏らした相からすれば、この築数の古宅がぶようにく売れる保証はない。
解体費用や仲介数料、譲渡所得税を差し引けば、元に残る現など、夫が豪語するほどくはないのだ。