"四十八歳、二十五年の家事を「無職」と呼ぶ夫へ" 第2話
私がこので、どれだけのものを放してきたのか、このは本当に何ひとつ見えていなかったのだ。
パートにているから暮らしていける? 収万円ちょっと、社会保険の扶養枠をれないようにシフトを削られ、ボーナスも退職もない非正規の勤務で、どうやっての女がひとりできていくというのか。
私がなぜ、正社員ではなくパートのままでいたのか。 このは、度でもその理由を考えたことがあったのだろうか。
「……今夜は、もう寝るわ」
私は震える指先でその類を掴み、ダイニングの引きしの奥へと押し込んだ。
鳴り散らす気力も、泣きすがる未練も湧かなかった。 ただ、というのみが、すべて空っぽのになって崩れ落ちていくような、底なしの虚無だけが胸を満たしていた。
夫は私の態度を「納得した」と受け取ったのか、満げにさく頷いた。 「まあ、急にサインしろとは言わないよ。よく読んでおいてくれ」
そう言って、夫は先に階の寝へとがっていった。 階段をるドスドスというい音が、井の向こうで響いていた。
静まり返ったリビングで、私はひとり、計の針を見つめていた。 夜を回っても、もできる気がしなかった。
階からは、規則正しい夫のいびきが聞こえてくる。
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あのは、妻に婚を突きつけたその夜に、何のろめたさもなくのように眠れるのだ。
私はちがり、廊の突き当たりにあるさな納戸へ向かった。
埃っぽい棚の最段。 古いアルバムや子供たちの通表が押し込まれた段ボール箱の奥から、冊のみのある缶を取りした。
蓋をけると、ぎっしりと詰まったスケジュール帳が姿を現した。
で冊。 文庫本サイズの、何の変哲もない事務用の帳。 分、計冊。
私はそれを抱えてダイニングテーブルに戻り、気スタンドのかりので、番古い帳をいた。
。結婚したの帳。 私の跡は今よりずっと丸く、楽しげな予定で埋め尽くされていた。
だが、ページをめくるにつれて、余のき込みは変質していく。
〇〇。女の奈美を産した。 《〇〇、復職面談。保育園の待順位が絶望。会社から『フルタイムに戻れないなら契約更は難しい』と告げられる》 《雅さんに相談。『奈美がさいうちくらい、そばにいてやれよ。俺が稼ぐから』と言われ、退職届を提》
〇〇。男の亮を産した。 《通信教育の簿記級講座に申し込み。夜の学習を確保したいが、雅さんの残業が続き、ワンオペ呂と寝かしつけで毎力尽きる》 《テキストをいたまま寝落ち。
受講期限切れ。受講料万円が無駄になった》
〇。夫が係に昇し、激務になった。 《元の運送会社の正社員事務に応募。類通過、最終面接へ》 《雅さんから『残業がある仕事は困る。子供たちの飯はどうするんだ? 俺のサポートはどうなる?』と猛反対され、内定を辞退》 《代わりに、週、午だけの公民館パートを始める》
〇。義母の千恵子さんが脳梗塞で倒れた。 帳の余は、もはや私の予定ではなく、すべて義母の介護記録で埋まっていた。 《介護2認定。域包括支援センターへ相談》 《義母の通院付き添い。曜・曜。リハビリ送迎》 《雅さんに『仕事をしセーブして、母さんの病院に付き添えないか』と頼まれる。『男の嫁なんだから頼むよ、俺は会社を休めない』と》
ページをめくる指が、刻みに震えた。
子供の発。PTAの役員会。義父の法。義母のオムツ交換の記録。 夫のワイシャツのクリーニングし。の検。町内会の集。
私のの帳には、「族の予定」しかかれていなかった。
帳の隙から、つ折りにされた枚の黄く変したが滑り落ちた。 拾いげて広げると、歳のときに申し込もうとしていた、ビジネスパソコン実務講座の受講申込だった。
の備考欄に、当の私の文字で、鉛のい殴りきが残っていた。
『族の事により、延期』
……延期。 私は、いつまで延期するつもりだったのだろう。