"四十八歳、二十五年の家事を「無職」と呼ぶ夫へ" 第1話
歳の誕の夜、夫から差しされたのは、プレゼントの箱ではなく、つ折りにされたA4用の束だった。
「子供たちもかられたしな。そろそろ、お互いのを考え直してもいい頃だとわないか」
リビングの蛍灯ので、夫——雅は平然と言い放った。
髪の混じり始めた髪に、会社のロゴが入ったポロシャツ。 夕の豚の姜焼きをあらかた平らげ、缶ビールを喉に流し込んだあとの、あまりにも軽な調だった。
テーブルの隅には、私が仕事帰りに駅のスーパーで買ってきた、号サイズのさなショートケーキが置かれたままになっている。
今は、私の誕だった。
結婚して。 婚式と呼ばれる節目を迎え、女の奈美は都内のIT企業に就職して暮らしを始め、男の亮もこの、方の国学に格して寮に入った。
ずっと、「子供たちが巣つまでは」と歯をいしばってきた。 夫もよく言っていたのだ。 「子供たちがになったら、ふたりで温泉にでもこう」「おもしは楽になるからな」と。
だから今夜は、しだけ特別な夜になるはずだった。 久しぶりに夫とふたりきりで、これまでの労をねぎらいえるのだと、本気で信じていた。
「……それ、どういう?」
喉の奥がカラカラに渇いて、声がかすれた。
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胃のあたりが、氷を詰められたようにたくなっていく。
夫は眉ひとつかさず、プリントアウトされた用の束を、差し指で私のへと滑らせた。
番のの肩に、った朝体で表題が印刷されていた。
『婚準備および財産分与に関する協議事項(案)』
文字が、網膜に突き刺さる。 のが真っになり、臓の鼓だけがの奥でドクドクと鳴り響いた。
「どういうも何もない。言葉通りのだよ」
夫は腕を組み、背もたれにく寄りかかった。
「奈美も社会になったし、亮の学費の目処もついた。父親としての責任は通り果たしたとってる。……子、俺たち、ここ何もまともに会話してないだろ。ただ同じ根ので、族っていうシステムを回すためだけに同居してきたようなもんだ」
「会話がなかったのは……あなたが、にいるときはいつもテレビかスマホしか見てなかったからじゃない」
わず反論がをついてた。けれど、夫は面倒くさそうに片を振った。
「どっちが悪いとか、そういうくだらない犯探しをしたいわけじゃないんだよ。ただ、男としてを過ぎて、ふと考えたんだ。俺の、このままでいいのかってな。定まであともない。残りのくらい、自分のためだけにとを使いたいんだよ」
自分のためだけに。
その言葉が、の奥で鋭利な針のようにちくちくと痛んだ。
「……に、誰かいるの?」
私の問いに、夫はでく笑った。
「いるわけないだろ。そんなドラマみたいな恋汰じゃない。ただ、気楽になりたいんだよ。仕事から帰ってきて、おの顔を窺うのも疲れた。誰の嫌も取らず、休に好きなだけ寝て、誰にも文句を言われずにきたい。それだけだ」
夫の目は濁りなく、完全に理性だった。 衝なりでも、浮気相にになっている浮ついた様子でもない。 何ヶもから、いや、もしかしたら何もから、自分ので完璧に計算を済ませていたの顔だった。
「このはどうするの」
絞りすように尋ねると、夫は待ってましたとばかりに顎をしゃくった。
「売るのが番っ取りい。尾のこのなら、築の建売でも、物を解体提で代くらいにはなる。宅ローンもあと数百万円残ってるが、売却益で相殺すれば、元にいくらかは残るはずだ。それを半分ずつ分ければいい」
「半分……」
「そうだ。俺は揉める気なんてないからな。法に則って、きれいに折半だ。おだって、公民館の事務パートを続けてるんだろ? ひとりなら、ワンルームのアパートでも借りれば分に暮らしていけるはずだ。お、昔から『自分のがほしい』って愚痴ってたじゃないか。
これでれて自由になれるんだぞ。謝してほしいくらいだ」
自由。
目のが、ぐらりと揺れた。
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