みかん小説
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"台所の生贄、義母の黒革手帳" 第4話

達也が当然のような顔で言った。 文恵は「そう? じゃあ、申し訳ないけどお願いしようかしらね。私、ちょっと横にならせてもらうわ」と、わざとらしくを引きずりながら居へとっていった。

取り残された台所。 そして、目のに広がっていたのが、この景だった。

私はエプロンをつけ、流し台のにった。 蛇を捻ると、古い管が錆びたようない唸り声をげ、ぬるいが流れしてきた。

積みなった皿の。 底にこびりついた汚れは、らかに晩放置されたものだった。昨使ったであろう鉢やグラスが、まるで図に私の到着を待っていたかのように、流し台の許容量を超えて積みげられている。

まな板のには、誰かが切りかけて放置したきゅうり。 包丁の刃先には乾いた胡瓜の皮が張り付き、酸化して黒ずんでいる。

居の方から、賑やかな笑い声が聞こえてきた。 さっきまで「腰が痛くて倒れそう」と言っていたはずの文恵の、驚くほど張りのある声が響いた。 「修造さん、このメロン、美穂の旦さんのご実からいただいたのよ。すごく甘いわよ」 「おう、うまいな。達也、おもえ」 「いただくよ。あ、翼、おそれ以ゲームやると目に悪いぞ」

襖の隙から覗くそのの景。 の効いた適な空で、族が円陣を組み、果物をに運び、テレビの野球に憂している。

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の台所は、まるでその栄華を支えるためののボイラーだった。 エアコンのは届かず、換気扇からはの湿ったが逆流し、私の額から汗が滲みて顎を伝っていく。

私は流し台のステンレスのたさを、もう度のひらで確かめた。

――なぜ、私はここにいるのだろう。

、私は何を恐れ、何を守るために、この所にち続けてきたのだろうか。 「いい嫁」とわれること? 夫との波をてないこと? 「あそこの奥さんは気が利く」と、親戚筋に評価されること?

そのすべてが、砂で作ったのように虚しく崩れっていくのを、私は自らの内側で静かに見つめていた。

私はスポンジに洗剤を含ませ、泡てた。 だが、そのはこれまでの従順な作業のではなかった。 私は械に皿を洗いながら、台所のあちこちに鋭い線をらせ始めた。

異変は、すぐに目についた。

まず、勝の脇にあるスチールラックのだ。 そこには、文恵が何も几帳面に保管しているはずの『事台帳』と呼ばれる黒革のノートが置かれていた。冠婚葬祭の納や親戚への贈答品、季節ごとの献がびっしりと記録されている、森の「歴史」そのものとも言えるノートだ。 いつもなら居の仏壇の引きしに鍵をかけて切にしまわれているはずのそのノートが、なぜか台所の片隅に、雑巾や洗剤のストックと緒に無造作に置かれていた。

さらに、流し台ののき戸。 ボウルを取りそうと屈み込んだとき、奥の醤油の瓶のに、見慣れない茶封筒が押し込まれているのが見えた。

私は背の居の気配を窺った。 テレビの音はきく、族は甲子園のサヨナラ勝ちのシーンにになっていた。誰も台所になど関を持っていない。

私はを拭き、素くその茶封筒を引き抜いた。 に入っていたのは、枚の類だった。

枚目は、内の総病院の形科からの診断。 患者名は森文恵。病名は「変形性腰椎症、両側変形性膝関節症」。そして医師の所見欄には、こう記されていた。 『常活における労働の禁止。特にのち仕事、過度な屈伸運は厳禁。速やかな介護認定の申請を推奨する』 付は、今の半ば――今からヶだった。

枚目は、さらに異様なものだった。 県内にある級介護付き料老ホームの入居案内パンフレットと、その見積。 として記載されていた額は、千百万円。額の利用料が万円。 その見積の宛名欄には、太いマジックでこうき殴られていた。 『達也へ。は実のを担保にする件、と相談済み。残債は達也の与から々補填のこと』 跡は、義父の修造のものだった。

そして枚目。

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