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"18年消えていた母の第一声は「手取りいくら?」" 第12話

ただ、私がかつて母親を無条件に信じていた証拠を突きつけて、何を言わせたいのか。

胸の奥で、歳の私が、声をげて泣き叫びそうになっていた。

スマートフォンの画面を伏せ、シーツに顔を埋めた。

歳の私の笑顔。 そして、その裏にかれた約束。

あのは、どんな神経でこれを送ってきたのか。 「こんなにしていた」と言いたいのか。 それとも、「母親だった証拠」を突きつければ、私が罪悪で折れるとでもったのか。

枕に爪をてた。 悔しくて、しくて、胃の奥が雑巾のように絞られる。 、私はこの文字を信じて、毎、埼玉の古びたの玄関で靴を見つめていたのだ。 のも、のも、くでのドアが閉まる音がするたび、臓をねさせて顔をげた。 けれど、迎えに来るはずのは来なかった。 そのが今、自分のプライドと活費のために、私がかつて抱いていた無垢な信頼を武器にして脅しをかけてきている。

画面が再び、く振した。

『、仕事が終わったら会えない? だけで話したいの。おの話はしないから。お願い』

文字の並びを見つめる私の指先は、たく張っていた。

もう、逃げ隠れするのはやめよう。 親戚ので醜態を晒してもなお、このは自分が私に何をしたのかを理解していない。 歳の私が受け取れなかった答えを、歳の私が、こので取りにかなければならない。

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私は画面に文字だけ打ち込み、送信した。

『いいよ』

翌の。 退勤、指定されたのは会社の最寄り駅から駅れた、幹線沿いのファミリーレストランだった。

平の夜、先には族連れやのグループが並んでいた。 ドリンクバーの械が鳴らす甲い子音。 ハンバーグの焼ける甘ったるい匂い。 そんな常の喧騒の真んで、番奥のボックス席に、母親はで座っていた。

法事のの黒いではなく、いベージュのニットを着ていた。 入れのされていない爪を神経質そうに噛み、メニューの端を指先でいじり回している。 私が席のにつと、母親は弾かれたように顔をげた。

「……来てくれたのね。座って」

声がかすれていた。 向かいのビニール張りのシートに腰をろす。 コートを脱ぐ私の作を、母親は怯えるような、縋るような目で見つめていた。 数に会社のビルので見せた、あの傲な品定めをするような目つきは、どこにもなかった。

ウェイトレスが置いていった氷を、母親は両で包み込んだ。 細かく震える指先が、グラスの表面に結した滴を拭っている。

「……写真、見てくれた?」

掠れた声だった。 私は何も答えず、ただ母親の目をまっすぐに見返した。

「あれね、京にてすぐの頃、所の公園で撮ったのよ。

ずっと財布に入れて持ち歩いてたの。本当に……本当に、あの頃は音を迎えにくつもりだったのよ」

母親の目元が赤く滲んでいく。 涙がぽろぽろとこぼれ、乾いたテーブルのに落ちた。

「康夫さんが急にんで、借取りがに来て……私、まだだった。世のことも何も分からなくて、怖くてたまらなかった。で子供を抱えて、賃も払えなくて、どうやってきていけばいいのか分からなかったの」

「うん」

「お母さん(節子)に音を預けた、本当に胸が張り裂けそうだった。京で必に働いたわよ。でも、稼いだおはあっというに消えていくし、寂しくて、細くて……そんなに、あのと会ったの」

母親は顔を覆った。 嗚咽が漏れる。 周囲の席の客が、怪訝そうにこちらをチラリと見た。 けれど、母親は気にする様子もなく、言葉を吐きし続けた。

「優しかったのよ、最初は。音のことも、活が落ち着いたらちゃんと話して、で引き取ろうとってた。でもね、言えなかった。子持ちだってられたら、このも私を捨てるんじゃないかってったら……怖くて、どうしてもにせなかったのよ」

「……」

「そうしてるうちに、が過ぎて、が過ぎて……どんどん言いせなくなった。音に連絡しようとするたびに、あの子にどんな顔をして会えばいいのか分からなくなって……怖くて、逃げちゃったの。

私だって、苦しかったのよ! 私にだって、私のがあったのよ!」

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