"18年消えていた母の第一声は「手取りいくら?」" 第10話
「族?」 私は従兄を睨み返した。 「、度も顔を見せず、私がおを持っていると分かった途端に現れたを、私はどんなで『族』だとえばいいんですか」
「昔のことは蒸し返すんじゃない!」 母親が突然、ハンカチを握りしめて叫んだ。 座卓をバンと叩く音が響く。 「あのは仕方がなかったって言ってるでしょ! 子供で私のを潰すわけにいかなかったのよ! それを今さら……あんたを産んであげた母親に対して、その言い方は何なのよ!」
化けの皮が剥がれた。 同を引くための々しい態度は消え、剥きしの自己保と傲さが畳のにぶちまけられた。 親戚たちが息を呑む。 気まずい沈黙が流れた。 それでも従兄は、引っ込みがつかないように咳払いをした。
「ま、まあ、美智子さんも言い方は荒いがね。過に何があろうと、産んだ母親であることに変わりはないんだ。ここはつ、音ちゃんがになって、々いくらかでも――」
「いい加減にしなさい」
をうような、い声だった。
全員の線が、座へ向いた。 ちがったのは、祖母の節子だった。
歳の、さく曲がった背。 いつも穏やかに笑っている祖母の顔から、切の表が消えていた。 その目は、氷のようにたく、座卓を囲むたちを射抜いていた。
祖母は無言のまま仏壇のへ歩いていくと、経机の横に置かれていたい袋を持ちげて戻ってきた。
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ドン、とい音をてて、それが座卓の央に置かれた。
袋からこぼれたのは、何冊もの古い学ノートと、輪ゴムで留められた膨な領収の束だった。
「お母さん……これ、何よ」 母親が引きつった声をした。
祖母は震えるで、番のノートをいた。 そこには、鉛の細い文字で、の付と数字がびっしりとき込まれていた。
「音の学の費。運会の体操着代。学の修学旅の積。の教科代。虫歯の治療費。学の入学……」 祖母の掠れた声が、静まり返った部に響き渡る。
「康夫さんがんで、美智子、あんたが京へ逃げしたあのから、私がを崩して、朝から晩までスーパーの清掃で稼いで払ってきたおの、すべての記録だよ」
の擦れる乾いた音がした。 祖母は、茶く変した領収の束を、母親の目のに突きつけた。
「あんたはヶで送を止めた。それきり、も話も寄越さなかった。音が夜にをして泣いた、あんたはどこにいたんだい。音が『お母さんはいつ来るの』って私に聞いて、答えられなくてで抱きって泣いた夜、あんたは京で男と暮らしていたんだろう!」
「お、お母さん、それは……!」 母親の顔から、完全に血の気が引いていた。
「私はね!」 祖母の声が、のように落ちた。 「音に、度だって恩返しを求めたことはないよ!」
座敷の空気が凍りついた。
「この子を育てたのは、老の面倒を見させるためじゃない! 親に捨てられたこの子が、世に顔向けして、できていけるにするためだよ! 当たりのことをしただけだ!」
祖母の目から、粒の涙がこぼれ落ち、皺だらけの頬を伝った。 けれど、その声は微も揺れていなかった。
「それなのに、あんたは何だい。、この子がどんないでランドセルを背負い、どんないで成式を迎えたのか、度も気にも留めなかったくせに。きくなって、料を貰えるようになった途端にしゃあしゃあと戻ってきて……最初に聞くのが、いくらを毟り取れるかかい!」
祖母は座卓に両をつき、母親を睨みつけた。
「恥をりなさい、美智子」
母親はをパクパクとかしたが、声にならなかった。 先ほどまで偉そうに「族の」を説いていた従兄も、親戚たちも、完全に押し黙って目を伏せていた。
分の、血のにじむような活のみ。 袋から溢れた領収のが、彼らの軽な徳を完全に圧殺していた。
「……親族の皆さん」 祖母はゆっくりと顔をげ、え切った線で親戚同を見渡した。
「美智子が困っていると言うなら、どうぞ、皆さんが毎万円ずつしって助けてやってくださいな。私と音は、円もしません。
文句があるなら、庭裁判所でもどこでも連れてきなさい。