"18年消えていた母の第一声は「手取りいくら?」" 第8話
たいコンクリートの段差に腰をろし、耶が渡してくれた温かい緑茶のペットボトルを握りしめると、張り詰めていたものが決壊した。
私は、昨夜からの来事をすべて話した。 ぶりに現れた母親のこと。 料を聞かれ、仕送りを求されたこと。 男と暮らすために私のを消していたこと。 そして、親戚のグループLINEで晒し者にされていること。
耶は途でを挟まず、眉をひそめて黙って聞いていた。 私が話し終え、震える指で顔を覆うと、耶はく、徹な息を吐きした。
「最悪」
その言があまりにも鋭くて、私は顔をげた。
「最悪だよ、その母親も、親戚たちも」 耶は腕を組み、階段のすりをコツコツと指先で叩いた。 「音、絶対に円も払っちゃダメだよ。万なんて渡したら最、次は万、次は同居って、骨の髄まで吸い取られるに決まってる」
「でも……親戚たちが、あんなに言ってきて……おばあちゃんのことまで悪く言われてる」
「親戚なんて、自分は円もさないくせに『親孝』っていう触りのいい言葉で悦に浸りたいだけの野だよ。あいつらが音の学費をしてくれた? おばあちゃんが倒れたに助けてくれた? 何もしなかったんでしょう?」
耶の言葉は、容赦なく私の気な部分を切り裂いていく。
「法律の扶養義務だって、親戚が言うような無制限のものじゃないからね。
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自分の活を成りたせたで、余力があれば支援するっていう『活扶助義務』に過ぎないの。しかも、過に養育を著しく放棄していた親に対しては、庭裁判所だって扶養の程度を幅にげるか、免除するケースがほとんどだよ」
「……法律で、免除になるの?」
「当たりでしょ。も放置して、活が苦しくなったからって突然現れた親に、子供のを搾取する権利なんてあるわけない。でぶつかっちゃダメ。相は罪悪を煽ってを巻きげようとしてるんだから。事実と、数字と、制度で壁を作らなきゃ」
耶の静な声を聞いているうちに、の芯にあったが、しずつ引いていくのが分かった。 そうだ。 私は、傷ついた歳の子供のまま泣いているじゃない。 今の私には、守るべき自分の活があり、何より、私を育ててくれた祖母がいるのだ。
階段をりてフロアに戻る直、ポケットののスマートフォンが再び震えた。
今度は、親族グループへの母親からの投稿だった。
『皆様、温かいお言葉をありがとうございます。私の育て方が至らなかったばかりに、皆様にご配をおかけして本当に申し訳ありません。来週の曜、お父さん(き祖父)の回忌で皆様がお母さんのに集まると伺いました。 私も伺います。親族の皆様ので、音と、これからの扶養についてきちんと膝を突きわせて話しいたいといます。
逃げずに、母親としての責任を果たしたいといます』
画面を見つめたまま、元がスーッとえていくのをじた。
回忌の法事の、親戚同が集まる事会。 あの所に来る気だ。 親族全員を方につけ、勢の目で私と祖母を包囲し、逃げをなくしたで「万円の仕送り」を呑ませる気なのだ。
『逃げずに、母親としての責任を果たす』
どのがそれを言うのか。 吐き気を通り越して、胸の奥底で、氷のようにたい炎が静かに燃えがるのをじた。
親戚たちからは、次々と賛同のスタンプが送られてくる。 『それがいい』 『みんなで見届けよう』 『族なんだから、話しえば分かりえる』
無責任な善の皮をかぶった悪が、画面を埋め尽くしていく。
スマートフォンを握りしめ、私はく息を吸い込んだ。
逃げない。 逃げるのは、私じゃない。
埼玉の祖母ので、あのがどんな顔をしてやってくるのか。 すべてを終わらせるための所は、向こうから都よく用してくれたのだ。
回忌の読経が終わり、臭い線の煙がに淀んでいた。
黒い喪を着た親戚たちが、畳のに座布団を引きずりながら円になる。 座卓のには、所の仕しから届いた精料理の折詰と、ビール瓶が並んでいた。 父方の従兄や、縁の伯父たち。