"18年消えていた母の第一声は「手取りいくら?」" 第6話
臓が、ドクンと嫌なね方をした。
『そこそこおのある、自営業のだったわ。姉さん、そのに養ってもらうことになってね。最初はそのが定したら、音ちゃんのことも話して引き取るつもりだったらしいのよ』
「……話して、引き取る?」 声が震えた。
『うん。でもね、言えなかったのよ、姉さん。の夫が残した借のことや、埼玉に歳の子供を残してきてるってこと……相のに、どうしても言いせなかったの。子持ちだってバレたら、捨てられるんじゃないかって怯えてね』
部のかりが、急にくなったような気がした。 の奥で、キーンという属音が鳴り響く。
『だから姉さん、私に止めしたの。「音のことは誰にも言わないで。私の過をってる親戚とは、全員縁を切る」って。その男のと籍を入れるために、あんたのを最初からなかったことにしたのよ』
が途絶えた理由。 迎えに来なかった理由。
活が苦しかったからでも、病気で倒れたからでもなかった。
母親は、しく見つけた男と幸せになるために。 自分のしいの邪魔になるから。 私というを、この世から綺麗さっぱり『消』したのだ。
『音ちゃん? 聞いてる? だから言いたくなかったのよ、こんなこと……』
叔母の湿っぽい声が、くから聞こえる。 私は何も答えられず、スマートフォンの赤い終話ボタンを指先で押した。
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ツーツーという無質な切断音だけが、静まり返った夜のに、いつまでも虚しく響いていた。
スマートフォンの画面が暗転し、居に静寂が戻った。
私の指先は、え切った液晶を力任せに握りしめたまま、微だにできなかった。 血の気が引いて、の先から体温が消えていく。
男のと、同居。 子持ちだとバレたら捨てられるから、私のをなかったことにした。
――私のを、消した。
胃の腑を直接掴まれて、雑巾のように絞りげられるような吐き気が込みげた。 呼吸が浅い。 喉の奥が狭くなって、ヒュー、ヒューとけない音が漏れる。
「……音?」
座卓の向こうから、祖母のおずおずとした声が聞こえた。 顔をげると、祖母は仏壇のに置かれた古いと為替の受取票を見つめたまま、さくを縮めていた。 由佳叔母さんとの会話は、静まり返った部ので、筒抜けだったはずだ。
「……音、丈夫かい。もう、いいんだよ。昔のことなんだから」
祖母のしわがれた声が震えていた。 その優しさが、今はたまらなく痛い。 このは、娘に裏切られ、歳だった私をで抱え込み、を切り崩して育ててくれた。 その、あのは京で、私など最初から産まなかったかのように、しい男と暮らしていたのだ。
そのだった。
ので、スマートフォンがけたたましく震えした。
画面に浮かびがったのは、登録したばかりの桁の番号。
母親からだった。
臓が嫌な音をてて鐘を打つ。 通話ボタンを押し、に当てた瞬、鼓膜を突き破るような切り声が響いた。
『あんた、由佳に何を聞いたのよ!』
第声が、それだった。 申し訳なさの欠片もない。 ただ、自分の隠しておきたかった急所を突かれたことに対する、剥きしの逆。
『余計なこと喋るなってあれほど言っておいたのに、あのバカ……! 音、由佳の言うことを真に受けないで頂戴。あの子は昔からげさに言う癖があるのよ!』
「……本当なの?」
私は掠れた声で遮った。 スマートフォンの向こうで、母親の荒い息遣いがピタリと止まる。
「京で男のと同居してたの? 私を隠して。私を迎えに来なかったのは、その男のに嫌われたくなかったからなの?」
『……ッ』
数秒の沈黙。 認めるでもなく、謝るでもない、張り詰めた沈黙。 そして、受話器から返ってきたのは、き直ったようなたい舌打ちだった。
『……だから何よ』
の奥が、真っになった。
『男のに「の夫の借があって、歳の子供もいます」なんて言って、誰が面倒見てくれるっていうのよ! 私だって必だったの。あのはまだ代よ? これからのがあったのよ! 子供抱えてに迷うくらいなら、経済力のあると緒になるのが番現実だったんじゃない!』
「そのために、私を捨てたの?」