"親戚の前で、夫が私の給料を義母に差し出した" 第1話
「来から、美咲の料は全部、うちの母さんに管理してもらうことにしたから」
夫がビールグラスを掲げてそう言った瞬、の奥でキーンと甲い音が鳴った。
川駅の個居酒。 義母の歳の還暦を祝うために集まった親戚は、総勢。 刺の舟盛りとぷらの皿が並ぶ座敷で、さっきまで「そろそろ目……あ、まだ目もだったね」なんて無神経な冗谈がび交っていた所だ。
……は? 今、この、なんて言った?
箸を持ったまま固まる私ので、義母は両を頬に当て、絵に描いたような満面の笑みを浮かべた。
「まあ、悠介ったら! 親戚のでそんな……でもね、若いじゃどうしても無駄遣いが増えるでしょう? 将来のを買うのためにも、私がしっかり預かってあげたほうがよねえ」
座敷のあちこちから、どっと歓声ががった。
「さすが悠介くん、しっかりしてる!」 「美咲さんも果報者だよ。こんな面倒見のいいお義母さんに計を見てもらえるなんてさ」 「今のうちに貯めとかないと、子どもができたとき変だからねえ」
々に私を褒めそやし、義母を持ちげる親族たち。 グラスとグラスがぶつかりう鈍い音が、まるでい世界の来事のようにぼやけていく。
喉の奥が、からからに乾いていた。
結婚してちょうど。
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医療器メーカーの事務として働く私の取りは万。 営業職の夫は万。 私たちは入籍のとき、お互いに納得してつのルールを決めたはずだった。
「活費用の共通座に、毎万ずつ入れる」 「残りの料は、各自で自由に管理・貯蓄する」
それを。 なぜ、私が言も聞いていないで、まるで決定事項のように発表されているのか。
私は膝ので握りしめたおしぼりを置き、隣に座る夫の横顔をまっすぐに見つめた。
「悠介さん」
努めて静かに、声を絞りす。
「それ、いつ決まった話?」
夫の笑顔が瞬だけ引きつった。 線を泳がせ、ビールの泡を見つめたまま、声でに囁いてくる。
「……おい、美咲。今は親戚みんながいるんだぞ。空気読めよ」
「空気?」
「母さんの還暦祝いの席だろ。息子の俺がしっかり庭を仕切ってるって見せてやりたいんだよ。話をわせろって」
臓の鼓が、どくどくと喉元までねがる。 話をわせる? 私の毎の労働の対価を、義母に丸投げする話に?
「私、そんな話度も承諾してない」
私の声は、決して鳴り声ではなかった。 けれど、くいそのトーンは、賑やかな座敷の空気をすっと切り裂いた。
隣の席の叔父が、グラスを元で止める。 義妹の奈緒が、気まずそうにスマホの画面へ線を落とした。
義母の笑顔から、温度がすっと消えた。
「美咲さん? 何か満でもあるの?」
氷のようにたい線が、私を射抜く。 世体を何よりもんじる義母にとって、親戚ので息子の顔にを塗られることは、万に値する侮辱なのだ。
「満というより、事実の確認です。夫婦の計管理については、入籍に悠介さんとで取り決めを交わしています。私の与の管理を第者にお任せする予定は、現も今も切ありません」
座敷が、しんと静まり返った。 エアコンの送音だけが、やけにきく響く。
夫が顔を真っ赤にしてちがりかけた。 「お、親戚ので恥をかかせる気か!」
「恥をかかせたのは、相談もなしに勝な嘘を事実のように語ったあなたでしょう」
私はちがり、々とをげた。
「お義母さん、還暦おめでとうございます。お席を汚して申し訳ありませんでした。失礼いたします」
背に突き刺さる無数の線と、夫の舌打ちを置きりにして、私はをた。 夜の川のは、ぬるいが吹いていた。 震えるでスマホを握りしめ、駅のロータリーまでで歩く。 りで界がかすんでいたが、涙は滴もなかった。 泣く暇があるなら、自分の元を固めなければならない。
自宅の賃貸マンションに戻るなり、私はPCをいた。 埼玉りそなのネットバンキングにログインする。
与振込座のセキュリティ設定を確認し、ワンタイムパスワードの再設定をう。 定期自送の設定画面をく。