"「お前のために断ってやった」母の仕送りを7年捨て続けた夫" 第15話
喫茶をたあと、夜がひどくよかった。 駅へ向かう波ので、私は久しぶりに、きく呼吸をした。
それから、ヶが過ぎた。
はあっというにまり、のはすっかり葉を落としていた。
夫からは、週に度、文のメールが届くようになっていた。 最初の頃の逆や命令調はすっかり消えっていた。
《真帆、寒くなってきたけど体調は崩していませんか》 《俺がいかに傲で、おの気持ちを無していたか、姉貴や会社の司に相談して痛しています》 《実のお義父さんとお義母さんにも、直接野へって座して謝りたい》 《夫婦カウンセリングでも何でも受ける。おの実との付きいにも度とをさない。だから、もう度やり直すチャンスをくれないだろうか》
文面からは、夫の焦りと悔が滲みていた。 彼にとって、私は「自分の都のいいように活を支えてくれる便利なパーツ」だったのかもしれない。 けれど、そのパーツを失ったことで、自分が築いてきたはずの「完璧な庭」がいかに脆く、自分のエゴだけで成りっていたのかを、きりの広い部でいらされているのだろう。
だが、私のは議なほど波たなかった。
「謝ってくれたから許す」 「反省したから元に戻る」
そんな単純な話ではないのだ。
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かけてすり減らされた尊厳と、母のを握りつぶされて流した涙は、度の反省文で帳消しにできるものじゃない。
私はく返信を打った。
《謝罪の言葉は受け取ります。でも、野の両親には絶対に会いにかないでください。両親は今、静かに暮らしています。これ以、あなたたちの都で実を引っかき回さないでください。私たちの関係については、別居から半が経つまでは、このまま距を置かせてください》
送信ボタンを押す指に、迷いはなかった。
戻るか、婚するか。 それを決める権利は、今や私にある。 あのに私のをコントロールされる々は、もう度と戻らない。
埼玉の賃貸契約を正式に結び、私は会社くのさな1DKに本格に腰を落ち着けた。 自分だけの料で賃を払い、費を払い、好きな具をつずつ揃えていく。 それはささやかだけれど、私が自分のでっているという確かな実だった。
野の実とは、週に度、曜の夕方に決まって話をするようになった。
最初は「仕事は忙しい?」「ご飯はべてる?」といったぎこちない会話だった母も、最ではスマートフォンの操作を覚えたらしい。
ピコン、とLINEの通音が鳴る。 画面をくと、しピントのぼけた写真が送られてきていた。 のりた畑と、収穫されたばかりの瑞々しい野沢菜の。
『今はお父さんの腰の調子も良くて、しだけいい菜っ葉が採れました。真帆、所教えてくれたら、送ってもいいかしら』
画面を見つめながら、わずふっと笑みがこぼれた。
『もちろん。待ってるね』
即座にそう返信を打った。
の終わりの、よくれた曜。
居のインターホンが鳴った。
玄関のモニターを確認すると、見慣れた配達員の制。 りで玄関へ向かい、ドアをける。
「お待たせしました、お荷物です!」
渡されたのは、野の名が印字された段ボール箱だった。 ガムテープが何にも、し器用そうに貼られている。 宛名には、私の名だけが、はっきりとした母の跡でかれていた。
受取拒否のスタンプも、差への返送記録もない。 まっすぐに、私のもとへと届いた荷物。
「ご苦労様でした」と笑顔でサインを済ませ、両で箱を抱えげた。 ずっしりとしたみ。 の匂いと、たいの空気。 胸の奥が、じんわりとくなる。
リビングの陽だまりのに箱を置き、カッターでテープを引いた。 箱をけると、番に聞。 それをめくると、丁寧に包まれたネギと、信州林檎がつ。 そして底の方に、しっかりとを縛られたタッパーがつ、収まっていた。
タッパーの蓋に、いマスキングテープが貼られ、母の丸っこい文字でメモが添えられていた。
『真帆へ。 今のは、いつもよりし塩っぱくなっちゃったかもしれない。