"「お前のために断ってやった」母の仕送りを7年捨て続けた夫" 第10話
プツン。 通話終ボタンを押し、画面を伏せて畳のに置いた。
茶のが、を打ったように静まり返っていた。 自分の肩が、激しいりと揚でさくしている。 母は元をで覆い、信じられないものを見るような顔で私を見つめていた。
「真帆……あんな、向こうのお義母さんに……丈夫なの……?」
震える母の声。 父は何も言わず、ただ井を見げて、く、いため息を吐きした。
「丈夫だよ」
私はたくなったで、母のを握りしめた。
「もう度と、お父さんとお母さんをあんなたちのサンドバッグにはさせないから」
翌朝。 の張り詰めた気が、古い造の母を包んでいた。
私は朝のから裏のれに入り、母と緒に片付けをめた。 埃まみれの学習机の引きしから、学の修学旅で買ったキーホルダーや、の格通、父が昔作ってくれた製のペンてがてくる。
つひとつをに取るたび、胸の奥がきしんだ。 夫が「過の遺物」と切り捨てたこれらは、私がされて育ってきたの集積だった。 必なものだけをボストンバッグとさな段ボール箱にまとめ、残りは粗ゴミの処理券を貼って、敷の隅に運びした。
お昼を過ぎ、母が作ってくれた温かいすいとんをですすっていただった。
砂利を敷いた庭先から、いのアイドリング音が聞こえてきた。
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カチッ、と父が箸を止める。 母がびくっと肩をねさせ、障子の隙から庭を覗き込んだ。
「……黒い、きなが止まったわ」
臓が、嫌な音をてて鐘を打った。
玄関の引き戸が、ガラガラと慮のない音をててく。 続いて、よく通る、聞き慣れた男の声がに響き渡った。
「こんにちはー。お義母さん、いらっしゃいますか?」
拓だった。
阪から直接幹線で戻り、宮の自宅からをばしてきたのだろう。 張帰りとはえないほど、パリッとした質なウールのコートを羽織り、髪も綺麗にセットされていた。
母が慌ててちがり、膝を擦りながらへ向かう。 「あ、拓さん……わざわざいところを……」
居から見ろすと、につ夫のには、宿野のロゴが入った級フルーツの袋がげられていた。
「急にお邪魔してすみません。真帆がご迷惑をおかけしていませんか? 僕も阪の張先で配で落ち着かなくて、幹線をめてでんできたんです」
完璧な笑顔。 礼儀正しく、妻を配する誠実な夫の仮面。 昨、話越しに私へ浴びせかけたあの酷な舌打ちと同じとは、とてもえなかった。
「あ、いえ……迷惑だなんてそんな……がってください。今、お茶を淹れますから」
母はすっかり気圧され、ペコペコとをげながら夫を茶のへと招き入れた。
夫は靴を脱いでがると、座布団のに正座し、父に向かって々とをげた。
「お義父さん、ご無汰しております。お体の具はいかがですか? 本当は僕がもっとく様子を見に来るべきだったんですが、仕事にかまけてしまい、本当に申し訳ありません」
見事なち振るいだった。 、この同じ部で父に向かって「もう連絡するな」「娘のを引っ張るな」と言い放ち、名刺の裏に脅迫めいた言葉を殴りきした男と同物だとは、誰も信じないだろう。
父はこたつの端にをついたまま、表を切崩さずに言った。
「……わざわざ埼玉から、ご苦労だったな」
その声のさに、夫の眉が瞬だけピクリといた。 だがすぐに、何事もなかったかのように穏やかな笑みを浮かべ、私の隣に腰をろした。
「真帆。昨は言い過ぎたよ、ごめんな」
夫は私の肩にを置こうとした。 私はを引いて、そのを避けた。
空で止まった夫の。 その瞳の奥に、わずかな苛ちと警告のが宿るのを、私は見逃さなかった。 『ヅラを保て』という、無言の圧力。
「お義母さん、これ、ほんの気持ちです。おで召しがってください」
夫は野の袋を畳のに滑らせた。には粒のシャインマスカットと桐箱入りのメロンが見えた。 田舎の老夫婦を黙らせるには分すぎる、都会の「誠」
の記号。
母は恐縮しきった様子で、「そんな、こんな価なものを……」